ガイドライン

(旧版)有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン

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IV.結果

 
2. 検診方法の証拠

1)胃X線検査
直接的証拠

X線検査法による胃がん死亡率の減少効果について無作為化比較対照試験は行われていない。直接的証拠となる研究はいずれも間接撮影に関する評価である。
日本での3文献の症例対照研究16) 17) 18)と坪野によるメタ・アナリシス19)により男女とも胃がん死亡率の減少効果が証明されている(男性OR:0.39 95%CI:0.29-0.52、女性OR:0.50 95% CI:0.34-0.72)(表6)。国内の症例対照研究で阿部らの研究が最も検討対象数が多く、症例820人、対照2,413人である18)。胃がん検診受診者の胃がん死亡は、未受診者と比べ、そのオッズ比は男性0.371(95%CI:0.242-0.568)、女性0.458(95%CI:0.2363-0.797)であった。海外の報告はベネズエラの研究のみであるが、過去に1度でも受診歴のあったもの(検診群:85人、対照群:375人)に限定して検討すると、胃がん死亡率が男性では53%(OR:0.47 95%CI:0.24-0.98)、女性では75%(OR:0.25 95%CI:0.12-0.51)と有意な減少を認めている20)。いずれの研究でもセレクション・バイアスの問題は認識されてはいるが、制御はされていない。予備的研究ではあるが、症例対照研究におけるコホート内症例対照研究19)では、セルフ・セレクション・バイアスの制御に配慮し、既往歴・喫煙・食事について補正を行った場合でも、胃がん死亡率の減少効果が認められた(OR:0.20 95%CI:0.04-0.96)(表6)。
コホート研究は2文献ある。Inaba らの研究では追跡期間が短く、サンプルサイズが小さいなどの問題によって、検診による死亡率の減少効果は認められなかった21)。Mizoue らの多施設共同による大規模コホート研究では、検診群30,771人、対照群56,541人(検診群には人間ドックも含む)を対象とし、男性では46%の死亡率減少効果を認めた22)(男性 RR:0.54 95%CI:0.41-0.70、女性 RR:0.74 95%CI:0.52-1.07)(表7)。女性では親に胃がんの既往歴があった場合に胃がん死亡率の減少効果を認めた(RR:0.32 95%CI:0.12-0.87)。本研究では、検診群は非検診群に比較して全がん及び全死亡の死亡率減少を認めており、元来健康な人あるいは健康に関心のある人が検診群に含まれていたなどの影響が大きく(セレクション・バイアス)、検診の有効性に関しては未解決と結論付けている22)。また、これら2件のコホート研究では受診歴は質問票のみの調査で検診情報ファイルと照合していないので測定バイアスが制御されておらず、また、評価対象は最初の受診のみであり、観察期間内の受診機会が考慮されていないなどの問題がある。
有末らの地域相関研究でも、高受診率群では男性30.2%、女性36.5%の死亡率減少を認めた(P<0.05)だけでなく、低受診群でも男性14.1%、女性22.6%の死亡率減少を認めた(P<0.05)23)


表6 胃X線検査による症例対照研究
報告者 報告年 研究地域 文献No 対象症例数 対象年齢 胃がん死亡率の抑制効果
(95%信頼区間)
Oshima A, et al 1986年 大阪府 16 症例/対照
男性: 54人/ 156人
女性: 37人/ 105人
記載なし
(検診対象40歳以上)
男性:0.595(0.338-1.045)*
女性:0.382(0.185-0.785)*
Pisani P, et al 1994年 べネズエラ 20 総数:241人/2,410人 記載なし 男性:1.52(0.94-2.47)
女性:0.77(0.33-1.78)
Pisani P, et al 1994年 べネズエラ 20 総数: 85人/ 375人 記載なし 総数:0.47(0.24-0.98)#
総数:0.25(0.12-0.51)##
Fukao A, et al 1995年 宮城県 17 男性:126人/ 364人
女性: 72人/ 213人
50歳以上
(検診対象40歳以上)
男性:0.32(0.19-0.53)
女性:0.63(0.34-1.16)
阿部陽介,他 1995年 千葉県 18 男性:527人/1,552人
女性:293人/ 861人
30-89歳
(検診対象40歳以上)
男性:0.371(0.242-0.568)**
女性:0.458(0.263-0.797)**
坪野吉孝,他 1999年 メタアナリシス 19 男性:706人/2,072人
女性:402人/1,179人
- 男性:0.39(0.29-0.52)
女性:0.50(0.34-0.72)
坪野吉孝,他 1999年 宮城県 19 総数: 27人/ 270人 40-64歳 補正オッズ比:0.20(0.04-0.96)+
*90%信頼区間 **99%信頼区間 #胃がんと診断された1ヶ月以内に検診を受けた者を除外
##胃がんと診断された6ヶ月以内に検診を受けた者を除外 +観察期間1年以内



表7 胃X線検査のコホート研究
報告者 報告年 研究地域 文献No 対象症例数
(症例/対照)
対象年齢 追跡期間 評価
指標
相対リスク
(95%信頼区間)
Inaba S, et al 1999年 岐阜県 21 男性:4,934人/6,536人
女性:4,208人/8,456人
35歳以上 40ヶ月 胃がん
死亡率
男性:0.72(0.31-1.66)
女性:1.46(0.43-4.90)
Mizoue T, et al 2003年 多施設共同 22 男性:12,999人/23,156人
女性:17,772人/33,385人
40-79歳 8年間 胃がん
死亡率
男性:0.54(0.41-0.70)
女性:0.74(0.52-1.07)
女性*:0.32(0.12-0.87)
Mizoue T, et al 2003年 多施設共同 22 男性:12,999人/23,156人
女性:17,772人/33,385人
  8年間 全がん
死亡率
男性:0.80(0.70-0.90)
女性:0.70(0.59-0.83)
Mizoue T, et al 2003年 多施設共同 22 男性:12,999人/23,156人
女性:17,772人/33,385人
  8年間 全死因
死亡率
男性:0.71(0.64-0.77
女性:0.74(0.66-0.83)
*両親のどちらかに胃がんの既往がある女性

 

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