ガイドライン

有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン
平成16年度 厚生労働省がん研究助成金
「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班

書誌情報
V.推奨レベル

 
各検診方法の推奨レベル(表11)を示した。本研究班の提示する推奨は、あくまでも死亡率減少効果と不利益に関する科学的証拠に基づいた判断である。推奨Aとされた検診方法であっても、偽陰性例・偽陽性例があることから、実施に際してのインフォームド・コンセントは必要である。推奨Cとされた検診方法は、偽陰性例・偽陽性例以外にも、偶発症や受診者の負担が比較的大きいことから、対象となる受診者の個別性に配慮した上で、インフォームド・コンセントを行わなくてはならない。
対策型検診及び任意型検診別に、各検診方法の推奨レベルを表12にまとめた。対策型検診は集団を対象としたがん検診であり、一定集団の死亡率減少を目的として実施するものを示し、公共的な予防対策として行われる。一方、任意型検診は、個人の死亡リスク減少を目的とし、個人の任意により受診するがん検診を意味する。


表11 各種大腸がん検診の推奨レベル
検査方法 推奨 表 現
便潜血検査化学法 A 死亡率減少効果を示す十分な証拠があるので、対策型及び任意型検診として、便潜血検査化学法による大腸がん検診を実施することを強く勧める。
便潜血検査免疫法 A 死亡率減少効果を示す十分な証拠があるので、対策型及び任意型検診として、便潜血検査免疫法による大腸がん検診を実施することを強く勧める。便潜血検査化学法に比べて、感度が優れている点、受診者の食事・薬剤制限を必要としない点から、化学法より免疫法を選択することが望ましい。
S状結腸鏡検査 C 死亡率減少効果を示す十分な証拠があるが、内視鏡到達範囲外についての死亡率減少効果は期待できない可能性が高い。一方、検査に伴う不利益は、小さいとは言い切れないため、対策型検診として実施することは勧められない。任意型検診として実施する場合には、安全性を確保すると共に、到達範囲外の死亡率減少効果は不明なことや、前投薬、検査による不利益について十分説明する必要がある。
S状結腸鏡検査と便潜血検査化学法の併用法 C S状結腸鏡検査と便潜血検査化学法、個々の検査については、死亡率減少効果を示す十分な証拠があるが、各々単独の検診と比較して両検査を併用することにより死亡率減少効果がどの程度増分されるかは定かではない。一方、検査に伴う不利益は、小さいとは言い切れないため、対策型検診として実施することは勧められない。任意型検診として実施する場合には、安全性を確保すると共に、前投薬、検査による不利益について十分説明する必要がある。
全大腸内視鏡検査 C 死亡率減少効果を示す相応の証拠があるが、検査に伴う不利益が無視できないため、対策型検診として実施することは勧められない。任意型検診として実施する場合には、全大腸内視鏡検査に伴う、前処置、前投薬、検査による不利益を事前に十分説明することが必要である。その実施は、事前の説明が可能なこと、さらに緊急時の対応可能な施設に限定される。
注腸X線検査 C 死亡率減少効果を示す相応の証拠があるが、検査に伴う不利益が無視できないため、対策型検診として実施することは勧められない。任意型検診として実施する場合には、注腸X線検査に伴う、前処置、前投薬、検査による不利益を事前に十分説明することが必要である。その実施は、事前の説明が可能なこと、さらに緊急時の対応可能な施設に限定される。
直腸指診 D 死亡率減少効果がないことを示す証拠があるため、実施することは勧められない。


表12 実施体制別大腸がん検診の推奨レベル表現
検診体制 対策型検診 任意型検診
Organized Screening Opportunistic Screening
概要 集団全体の死亡率を下げるために対策として行う。 個人の死亡リスクを下げるために個人の判断で行う。
対象 集団 個人
具体例 老人保健事業による集団検診・個別検診
職域検診
人間ドック
スクリーニング方法 推奨
便潜血化学法*1 ○(推奨A) ○(推奨A)
便潜血免疫法*1 ○(推奨A) ○(推奨A)
S状結腸鏡*2 - ○(推奨C)
S状結腸鏡+便潜血化学法*2 - ○(推奨C)
全大腸内視鏡*2 - ○(推奨C)
注腸X線*2 - ○(推奨C)
直腸指診 × ×
*1  化学法に比べ、免疫法は、感度が高く、受診者の食事・薬剤制限が必要ないことから、免疫法を選択することが望ましい。
*2 無視できない不利益があることから、安全性を確保し、不利益について十分説明する必要がある。

 

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