ガイドライン

EBMの手法による
周産期ドメスティック・バイオレンスの支援ガイドライン

書誌情報
 
第7章 推奨と解説


I 支援環境を整える

支援環境 エビデンス・テーブル

(EVレベル:エビデンス・レベル)
著者・年・国 セッティング  対象  DV
判定方法
データ
収集方法
介入 主要結果・
コメント
研究
デザイン
EV
レベル
 システマティック・レビュー
Ramsay et al.
2002
UK
救急部
第一次医療施設
妊婦健診を受けるクリニック
RCT, 前後比較研究, 症例集積, タイム・シリーズなど10文献。 該当せず データベース(Medline, Embase, CINAHL)を使用。2001年1月まで  
DV女性の発見率は,0〜3%。
スクリーニングの結果,DVの発見率は上昇。エビデンス・レベルは低かった。
SR 1a
 ランダム化比較試験
Campbell et al.
2001
USA
大都市39病院のうちランダム抽出された12カ所の中規模病院の救急部(ED) EDスタッフ
計649人ベースライン
n=336
介入後
n=313
該当せず 医療記録,スタッフと患者の調査,トレーニング後のスタッフインタビュー 2日間のトレーニングとプランニングプログラム
介入群は,実施率が有意に上昇(p<0.04)。
介入群のほうがスタッフの知識と態度は有意に上昇。(p<0.019)
患者の満足度は,介入群のほうが有意に上昇(p<0.001)。
DVの発見率は有意差なし(p=0.52)。
RCT 1b
Coonrod et al.
2000
USA
500床の州立病院 レジデント
介入群・コントロール群ともに各68人
N/A 電話によるインタビュー DVに関する教育的介入
DVのスクリーニングの重要性を強調した20分間のセッション
介入群のレジデントがDVのスクリーニング実施率が高かったが有意な違いはなし(71%vs 52%, RR 1.35, 95% CI:0.96, 1.90, p=0.07)。
専門領域により実施率に違いがあった(p<0.01, 家庭医:救急医:産婦人科医:小児科医:内科医:外科医=100%:90%:80%:63%:47%:0%)。
介入後で知識は有意に上昇(介入前57%→介入後73%
コントロール群56%,p=0.002)。
RCT 2b
 比較対照研究
Wiist et al.
1999
USA
大都市の公的病院,3クリニック 医療者(ナース,医師,栄養士,カウンセラー,事務職)
対象のうち,540医療記録を選出。
N/A チャート・レビュー アビュース・プロトコール
90分のセッション(知識,アセスメント,カウンセラーへの紹介)
スクリーニングの実施率は,介入群で88%
コントロール群で0%(p=0.001)であった。
介入群はコントロール群に比べ,暴力にあっている率が高かった(7% vs 0%, p<0.0001)(OR6.78, 95%CI:2.35, 19.56)。
比較対照試験 2c
 後ろ向きコホート
Larkin et al.
1999
USA
都市中心部のレベル1のトラウマセンターの救急部
43,000/年の患者
男女の看護師
ランダムに選出された1,638人の診療記録
Domestic Safety as-sessment チャート・レビュー Domestic Safety assessmentツール。
直接聞き取り調査。
4時間のトレーニング・セッション
スクリーニング実施率は,1,693人中483人(29.5%)。
女性のナースで,スクリーニング実施率に差はなかった(91.7%実施vs 91.2%非実施)。
スクリーニング実施率は,救急車で来所していないほうが(OR0.57, 95%CI:0.42, 0.77),医学的
重症でないほうが(OR2.05, 95%CI:1.62, 2.59),昼間のほうが夜間より(OR0.58, 95%CI:0.39, 0.86)高かった。
現在・過去におけるIPVの発見率は,18%。コメント:DSAは「学際的DVタスクフォース」グループが作成した。
後向きコホート 3b
 対照群なしの介入研究
Knight et al.
2000
USA
中規模コミュニティのカトリック病院 内科医45人患者
18歳以上の女性116人
該当せず 質問紙
(ITTDVQ, UTTDVQ, IBWB, SESFBW-PV)
教育プログラム
(P.A.K.:The residency program director allowed the principal investigator)
DVの知識,ロールプレイ,ディスカッション
レジデントの態度は変化なし。
DVについて質問された患者の割合は0.8%から17%に有意に増加(OR25.2, 95% CI:6.1, 104)。
対照群なしの介入研究 4
Larkin et al.
2000
USA
都会のlevel 1 trauma and burn center
救急部
スタッフ40人 DSA
(身体的・精神的・性的虐待)
医療記録に記載されているアセスメントツールの使用状況 disciplinary action model
医療者への管理的介入:規律的行動(4段階)
DVスクリーニング実施率は,29.5%から72.8%へ有意に上昇(OR2.5, 95%CI:2.3, 2.7)。
DV発見率は,5.3%から8.0%へ有意に上昇(OR1.5, 95%CI:1.2, 2.0)。
介入後は,夜勤帯,精神科患者へのスクリーニングが行われていなかったが,行われるようになった。
対照群なしの介入研究 4
Harwell et al.
1998
USA
12の州立コミュニティ・ヘルスセンター 医療者372人(うち,医師108人)
Phase1.108人
Phase2.
前251人
後255人
N/A 第一段階:
4項目の快レベルをはかる質問紙
第二段階:
チャート・レビュー
RADAR:トレーニングプロジェクト(3〜6時間の他領域にわたるトレーニング)
医療者の知識,コンフォートレベル(医療者自身の聞きにくさ)は,介入直後に上昇するが,3カ月後には低下した。
DVスクリーニング実施率(RR1.87, 95%CI:1.61, 2.16),DVが疑われる率(RR1.49, 95%CI:1.13, 1.99),セイフティアセスメント実施率(RR1.65, 95%CI:1.39, 1.97),リファー実施率(RR1.81, 95% CI:1.45, 2.28)は,介入後に有意に上昇。
暴力の医療記録への記載の実施率に差はなし。
対照群なしの介入研究 4
Roberts et al.
1997
Australia
ED 91人のナースと72人の医師。 回収は,医師31人,ナース91人。 該当せず 自記式質問紙 EDの医師・ナース向けの教育的介入プログラム
1時間のワークショップ
一般知識は,ナースは正解率が上昇し61.6→71.5%(p=0.0001),医師は63.4→72.4%(p=0.0015)。
態度については,女性のナースの態度が好転(p=0.0005)。
地域のリソースの知識については,ナースで上昇(14.6→47.6%,p=0.0009)。
法的側面の知識も,正解率が上昇。(p<0.0001)
対照群なしの介入研究 4
Fanslow et al.
1993
New Zealand
公立病院の救急部 地域の2公立病院の救急部,
33人のナース,28人のスタッフ
(チャート8,051)
N/A チャート・レビュー プロトコルにそったスタッフトレーニング
介入群と対照群で,発見率に有意な差はなし(Χ2=0.13,p=0.72)。
介入群のほうが,ケア介入(p=0.006)が有意に多く,記録(p=0.06)も多くされている傾向にあった。
対照群なしの介入研究 4
Tilden et al.
1987
USA
大都市の救急病院 ナース22人
(患者の記録447人分をレビュー)
N/A チャート・レビュー プロトコールにそったスタッフトレーニング対象となる患者の記録のうち,4つにコード化されて記録(1:SP positive, 2:SP probable, 3:Spsuggestive, 4. SP negative)
battered womenのpositiveであったものは,介入前 n=72(9.72%),介入後 n=74(22.97%)で有意に増加(p=0.03, OR 2.74)。
対照群なしの介入研究 4
 横断研究
Chamberlain et al.
2002
USA
アラスカ
3つの異なるクリニック
プライマリーケアを実践しているアラスカの医師305人 N/A 郵送法による質問紙調査 暴力に関する特定の質問を直接行う。
バリアは,文献検討と半構成的質問による質的インタビュー
5.7%の医師は,女性が受傷しているときは,ほとんどスクリーニングを実施。しかし,最初の受診や年1回の受診時にはほとんどスクリーニングを実施せず(おのおの,実施率は6.2%, 7.5%)。
1/3以上の医師は,女性患者のうち10%かそれ以上の割合で親密なパートナーからの何らかの暴力を受けていると推測。
過去2年間にpartner abuseについてのトレーニングを受けた医師は,健診でスクリーニングを行っており(p=0.002),けがをしている患者の場合でも,よりスクリーニング率は高かった(p<0.01)。
スクリーニングをするほうがいいと感じる医師が,スクリーニングに否定的な医師と比べて,健診でスクリーニングの行う傾向に差あり(p=0.006)。
女性の患者abuseを受けている割合が10%以上であると推測している医師は,その割合が5%以下であると認識している医師に比べて,初診のスクリーニング率高い(OR 8.08, 95%CI:3.47, 18.82)。
Abuseに関わる必要があると感じている医師は,感じていない医師に比べて,健診のスクリーニング率高い(OR3.05, 95%CI:1.45, 6.45)。
横断研究 3b
Early et al.
2002
USA
中西部の大都市における7つの都会とその近郊の病院の救急部 195救急部ナース(男女) N/A 質問紙調査 2つのシナリオ(vignettes)を示した。
(LanzaとCampbellの研究に従って)
27項目からなる,Nursing care checklist(NCC)
70%のナースは,患者から暴力を受けた経験があり。
40%のナースは,パートナーから暴力を受けたことがあった。
19%はパートナーに暴力をふるったことがあった。
一方,患者からも,パートナーからも暴力を受けていないナースは20%。
暴力を受けた経験と提供するケアに関連はなかった。
コメント:セッティング,トラウマレベル,ロケーション等に差あり。
横断研究 4
Edin et al.
2002
Sweden
スウェーデンの北部,
Vasterbotten
・質問紙(郵送)
36分娩前のクリニックに勤務する51人の助産師
N/A インタビューによる調査  
質問紙の回収率82%(42/51)
助産師の中では,DVについてルチーンに何かをすることはなかった。妊婦全員に,DVについての質問をするという助産師はなかった。
コメント:助産師が妊婦を対象に調査している点は,ユニーク。
横断研究 5
Elliott et al.
2002
USA
  アメリカの4つの専門領域(内科医,家庭医,産婦人科医,救急医)のうち,2,400人の国のシステマティック・サンプル
回答率は,53%(1,103/2,087)であった。
N/A 質問紙による郵送法 質問紙:
スクリーニング実施率は,6%。
スクリーニングの実施率が家庭医を基準に高かったのは,産婦人科の領域で(OR0.49,95%CI:0.31, 0.78),救急に関連したスクリーニング実施率は(OR 1.72, 95%CI:1.13, 2.63)と低かった。
DVのトレーニングを受けた場合は,受けなかった医師に比べて,スクリーニング実施率は高く,過去12カ月以上前にトレーニングを受けた場合では(OR 0.54, 95%CI:0.34, 0.85)であり,12カ月以内では(OR0.46, 95%CI:0.29, 0.74)であった。
横断研究 3b
Gerbert et al.
2002
USA
  医師(American Medical Asso-ciation)のリストの中から,610人 N/A 郵送法による質問紙調査.  
新患時のスクリーニングの実施率は,DVは19%,喫煙98%,アルコール中毒90%,HIV/STDリスク47%で,有意にDVは低かった(p<0.001)。
新患以外の通常の患者のスクリーニングの実施率も,13%で,有意に低かった(p<0.001)。
DV発見後の患者のカウンセリングの頻度は,13±8回,有意にDVは高かった(p<0.005)。
DVの介入の必要性については,有意にDVは低いという認識(p<0.007)。
横断研究 3b
Moore et al.
1998
USA
ノースカロライナの全域 周産期の実践に関わる275人のナース(87公的健康施設,71病院,117私的施設) 定義を明記せず
Domestic Violence
郵送法による質問紙調査 質問紙:デモグラフィック7項目
態度や信念16項目
実践23項目
スクリーニングに関連する実践では,PHNはスクリーニングする傾向にあった。(PHN70.1%,私的施設のナース18.3%,病院ナース43.5%, p=0.001)
女性が慢性身体の愁訴や性的問題,慢性の骨盤痛について,よりPHNはレポートする傾向(PHN42.5%,私的施設のナース28.9%,病院ナース32.9%,p=0.000)。
特定の教育を受けたナースは暴力の実態を日常的にアセスメントしていた(34%vs 49%,p=0.035)。
横断研究 4
Ferris
1994
Canada
カナダの7つのprovinceから,1/6あるいは160人以下,ケベックに関しては1/15の医師。 963人の家庭医と一般医(general practitioner)1,574人中,963人(61%)。 N/A 郵送法による質問紙 (対象者へ御願文,質問紙,返信用封筒,匿名)
態度:都市と地方の医師とで態度に,違いはなし。
30.6%の医師が身体的暴力を診断可能,25.2%が精神的暴力を診断可能と認識。
98.7%は暴力のケースを見逃しており,55.3%は3割かそれ以上のケースを見逃していると認識。
68%は発見の方法をもっておらず,発見方法をもっている場合は,発見率が高くなると回答(p=0.0007)。
wife abuseへの最も重要な役割は,地域の情報源を女性に提供(93.6%),精神的サポート(93.3%),紹介(86.5%),患者の守秘義務(56.9%)。
継続医学教育について72%が知らない,87%はワークショップ等の教育が必要と感じていた。継続教育で重要な項目は,診断(85%),処置・手当て(83.1%),法律に関すること(74.4%),地域の情報源(69%),紹介先(64.1%),医師/患者に関すること(54.3%),結婚カウンセリング(42.4%)であった。
横断研究 3b
Glowa et al.
2002
USA
ノースカロライナのチャペルヒル 21人のレジデント。 partner violence 質問紙によるスコアリングとカウンセリング 模擬患者で3カ月間のIPVのトレーニング。医師-患者役割をビデオにとった。
本教育システムを行った場合,最初からDVの被害者にポジティブな態度を示していたレジデントは,最終調査の時点までその態度は変化なし。
コメント:主要結果は,質的解釈になっている。
横断研究 5
Heinzer et al.
2002
USA
都市の医療センターの救急部 EDの中での医療関係者(学生,レジデント,アシスタントの学生,) N/A インタビューによる調査 ビデオをスタッフに示す。5項目の質問紙:患者との関係の築き方,スクリーニング質問の尋ね方,問題のある回答への処理の仕方,患者のストレスの取り扱い方
スクリーニングの実施率は,男性25人,女性81人であった。
発見率は,女性28.4%であった。そのうち,25%は身体的暴力,10%は性的暴力であった。
このうち,69%はボーイフレンドからの暴力の危険が多かった。
救急部の19時から7時にかけては,スクリーニングを行いにくい環境にあった。
コメント:対象患者が男女両方である。
横断研究 4
Janssen et al.
2002
Canada
バンクーバーの産科的ケアを提供する2施設 300人のナース Abuse As-sessment Screen チャート・レビュー ロジャースの「Theory of Diffusion of Innovations」(改革の広がりの理論)
1) 知識
2) 説得
3) 決定
4) 実施
5) 確認
最初に変革者や適応の早いものが,このデザインに参入した。
変革を進めていくうちに,スクリーニング率は,42.1%から,53.8%(4カ月後),60.7%(6カ月後),62.1%(18カ月後)に増加した。
コメント:介入のdoseが均一でない。
横断研究 4
 ナラティブ・プレビュー
Ronnberg et al.
2000
Sweden
  女性の健康と家庭内・性的暴力に関する276文献。
49文献をレビュー対象。
該当せず。 Medline, PsycLIT, Sociofile, 1988〜1998   ヘルスケア・システムのバリアとして,医療者の視点からみたものと女性の視点からのものがある。 ナラティブ・レビュー 5

 

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