ガイドライン

EBMの手法による
周産期ドメスティック・バイオレンスの支援ガイドライン

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資料
資料1 エビデンスのレベルと推奨度分類


Oxford Centre for Evidence-based Medicine Levels of Evidence(May 2001)
 Level  治療/予防,
病因/害
  予後     診断   鑑別診断/症状保有率(symptom prevalence)研究 経済・決断分析
1a ランダム化比較試験のシステマティック・レビュー(均質性あり) コホート研究のシステマティック・レビュー(均質性あり);複数の異なる集団で妥当性が検証された臨床決断則(Clinical Decision Rule:CDR) レベル1の診断的研究のシステマティック・レビュー(均質性あり);複数の異なる医療施設で行われたレベル1b研究を基にした臨床決断則 前向きコホート研究のシステマティック・レビュー(均質性あり) レベル1の経済研究のシステマティック・レビュー(均質性あり)
1b 個々のランダム化比較試験(信頼区間の狭いもの) 追跡率80%より大きい個々の開始(または発端)コホート研究
(inception cohort study)(訳注:疾患の初期段階で把握された対象集団を追跡して予後をみる研究。疾患の発生から時間がたって研究に組み入れられると患者の状態が変化する);あるひとつの集団で妥当性が検証された臨床決断則
適切な†††参照基準 (reference standards)を用いた妥当性確認目的の検証的**コホート研究;あるいは1つの医療施設で試みられた臨床決断則 良い追跡がなされている****前向きコホート研究 臨床的に意味が認められる(sensible)コストまたはコストの代理指標となるもの(alternatives)に基づいた分析で;エビデンスのシステマティック・レビューであり;多元感度分析(multi-way sensitivity analyses)をしているもの
1c 治療群以外全員が亡くなっている場合,または治療群の全員が生存している場合§ 対象全員が生存しているか,あるいは全員が死亡しているような症例集積 絶対的な特異度で検査陽性のとき診断が確定できるもの(SpPins)や,絶対的な感度で検査陰性のとき診断から除外できるもの(SnNouts)††† 対象全員が生存しているか,あるいは全員が死亡しているような症例集積 絶対的better-value分析または絶対的worse-value分析††††
2a コホート研究のシステマティック・レビュー(均質性あり) 後ろ向きコホート研究やランダム化比較試験の非治療群におけるシステマティック・レビュー(均質性あり) レベル2bおよび,より優れた2bの診断的研究のシステマティック・レビュー(均質性あり) レベル2bおよび,より優れた2bの研究のシステマティック・レビュー(均質性あり) レベル2bまたは2cの経済研究のシステマティック・レビュー(均質性あり)
2b 個々のコホート研究(質の低いランダム化比較試験を含む;〈例〉追跡率が80%未満) 後ろ向きコホート研究あるいはランダム化比較試験の非治療群における追跡 ; 研究結果から導かれた臨床決断則,あるいは折半法§§§のみで妥当性が検証されたもの 適切な†††参照基準を用いた探索的**コホート研究 ; 研究結果から導かれた臨床決断則,あるいは折半法§§§,もしくはデータベースのみで妥当性が検証されたもの 後ろ向き,または追跡に問題があるコホート研究 臨床的に意味が認められる(sensible)コストまたはコストの代理指標となるもの(alternatives)に基づいた分析で;限定的なエビデンスのレビューあるいは単独の研究で;多元感度分析をしているもの
2c アウトカム研究;生態学的研究 アウトカム研究   生態学的研究 監査(Audit)あるいはアウトカム研究
3a 症例対照研究のシステマティック・レビュー(均質性あり)   レベル3bおよび,より優れた3bの研究のシステマティック・レビュー(均質性あり) レベル3bおよび,より優れた3bの研究のシステマティック・レビュー(均質性あり) レベル3bおよび,より優れた3bの研究のシステマティック・レビュー(均質性あり)
3b 個々の症例対照研究   研究対象となる患者を連続的に組み入れていない(non-consecutive)研究;または参照基準が対象者すべてには行われていない研究 研究対象となる患者を連続的に組み入れていない(non-consecutive),あるいは極めて限られた集団で行われたコホート研究 限定的なコストやその代理指標に基づいた分析;データによる推定値の質は低いが,臨床的に意味のある変数を組み合わせて感度分析を行っているもの
4 症例集積(および質の低いコホート研究や症例対照研究§§ 症例集積(および質の低い予後コホート研究*** 症例対照研究で,不適切なあるいは非独立的な参照基準を適用しているもの 症例集積,または当該検査法評価に参照基準ではなく代理の参照基準(訳注:確定的な基準診断法でないもの)が適用されているもの 感度分析が行われていない分析
5 明確な批判的吟味が行われていない,または生理学や基礎実験,“原理”(“first principles”)に基づく専門家の意見 明確な批判的吟味が行われていない,または生理学,基礎実験,“原理”に基づく専門家の意見 明確な批判的吟味が行われていない,または生理学,基礎実験,“原理”に基づく専門家の意見 明確な批判的吟味が行われていない,または生理学,基礎実験,“原理”に基づく専門家の意見 明確な批判的吟味が行われていない,または経済学理論,“原理”に基づく専門家の意見
1998年11月にBob Phillips, Chris Ball, Dave Sackett, Doug Badenoch, Sharon Straus, Brian Haynes, Martin Dawesによって初版が作成され,現在に至る。


注釈
以下の点からレベルを確定できない場合,使用者は“-”を付してレベルを示すことができる。
研究結果が1つしかなく,広い信頼区間を示す場合(それゆえ,例えば,ランダム化比較試験における絶対リスク減少(ARR)は統計学的に有意ではないが,その信頼区間は臨床的に重要な有効性や害の可能性を除外できない)
あるいは,問題となるほどに(および有意に)異質性が大きい研究におけるシステマティック・レビュー
このようなエビデンスでは確定的結論は出せないため,推奨度は“D”となる。


均質性(homogeneity)とは,システマティック・レビューにおいて,個々の研究間の結果の方向性や結果の程度に危惧を与えるばらつき(異質性)がないことを意味する。統計学的に有意な異質性があるからといって,すべてのシステマティック・レビューを危惧する必要はなく,また危惧すべき異質性がすべて統計学的に有意であるとは限らない。上記のように危惧を与える異質性を示す研究は,表記レベルの後に“-”を付けるべきである。
臨床決断則(これらは予後推定あるいは診断群を導くアルゴリズムあるいは重症度判定基準である)。
信頼区間が広い臨床試験や他の研究をいかに理解し,レベルを付け,用いるかについては,注釈#2を参照。
§ その治療がなかったときには患者全員が死亡したが,その治療が行われるようになって生存する患者が出てきた場合や,その治療がなかったときには死ぬ患者もいたが,その治療が行われるようになって死亡する患者がなくなった場合。
§§ 質の低いコホート研究とは,比較群の定義が明確でない,かつ/または,曝露とアウトカムの測定が曝露群と非曝露群間で同じ客観的方法で(望ましくは盲検化して)行われなかったもの,かつ/または,既知の交絡因子の同定あるいは適切な調整ができなかったもの,かつ/または,患者を十分長く完全に追跡しきれなかったものをいう。質の低い症例対照研究とは,比較群の定義が明確でない,かつ/または,曝露とアウトカムの測定が曝露群と非曝露群間で同様の客観的方法で(望ましくは盲検化して)行われなかったもの,かつ/または,既知の交絡因子の同定あるいは適切な調整ができなかったものをいう。
§§§ 折半法による妥当性検証(Split-sample validation)は,ある部分の情報をすべて収集したうえで,人為的に対象群全体を派生群(検証対象群以外の群)と仮説検証対象群(ある仮説検証をするために恣意的に選択された群)に分割し,その選択された仮説検証対象群で検証するものである。
†† Absolute SpPinは,診断法の特異度が十分高く検査が陽性の場合に疾患ありと判定でき,Absolute SnNoutは,診断法の感度が十分高く検査が陰性の場合に疾患なしと判定できる。
‡‡ Good,Better,Bad,Worseは,臨床的な有効性とリスクの視点からの治療間の比較である。
††† 「適切な」参照基準とは,研究対象とした検査(当該検査法)とは独立で,かつ盲検的・客観的に患者全員に適用されるものである。「不適切な」参照基準とは,厳格に適用されていない(盲検的・客観的に適用されていない)が,研究対象とした検査とは独立なものである。独立でない参照基準(当該検査法での評価と参照基準の評価方法に内容的にだぶる部分があったり,当該検査法の結果と参照基準の結果が似る可能性があるような場合)を用いていれば,その研究はレベル4である。
†††† より価値の高い治療とは,明らかにより安価でありながら良い治療,あるいは等価またはコストを削減した状態における,より良い治療のことである。より価値の低い治療とは,良いがより高価な治療,あるいは等価またはより高価でありながらより劣る治療を示す。
** 検証的研究(validating study)とは,既に妥当性が証明された検査法を基準にして特定の診断法の質を分析するものである。探索的研究(exploratory study)とは,情報を収集し,どの因子が「有意」であるかを見つけるため,(例えば回帰分析を使用して)データをさまざまな角度から探ろうとするものである。
*** 質の低い予後コホート研究とは,対象となるアウトカムが既に判明している患者に偏ったサンプリングバイアスが存在するものや,アウトカムの評価が研究対象の80%未満のもの,アウトカムが盲験化されず,非客観的な方法で決定されているもの,あるいは交絡因子の調整がなされていないものを指す。
**** 鑑別診断に関する研究での良い追跡とは,追跡率が80%より高く,代替の診断が明らかになるのに十分な期間を具備したものである(例えば急性疾患であれば1〜6カ月,慢性疾患であれば1〜5年)。


推奨度分類
  A   レベル1の研究によるエビデンスがある場合
B レベル2または3の研究がある場合,あるいはレベル1の研究結果を外挿して適用する場合
C レベル4の研究がある場合,あるいはレベル2または3の研究結果を外挿して適用する場合
D レベル5のエビデンス,あるいは,どのようなレベルのものでも研究結果にばらつきがあったり非確定的な研究結果しかない場合
「外挿(Extrapolations)」とは,研究が実施された状況と臨床的に重要な違いが存在する可能性のある設定に,その研究結果を適用する場合をいう。

訳者注
1) 注釈の表の中に注釈#2とあるのは,今回の版では注釈全体を指すものと考えられる。なお,1999年版では注釈#1〜3があり,以下のように示されていた。
 
#1. これらのレベルはNHS R&D Centre for Evidence-Based Medicine(Chris Ball, Dave Sackett, Robert Phillips, Brian Haynes and Sharon Straus)のメンバーが繰り返し討議した成果である。
#2. このアプローチに基づく推奨度は「平均的な」(average)患者群に適用するものであり,個々の患者については,その個人の生物的特性(リスク,反応性など)や治療の嗜好を考慮して修正する必要がある。
#3. 以下の点から確定的な答えに至っていない場合,利用者は“-”を付してレベルを示すことができる。
研究結果が1つしかなく広い信頼区間を示す場合(それゆえ,例えば,ランダム化比較試験における絶対リスク減少は統計学的に有意ではないが,その信頼区間は臨床的に重要な有効性や害の可能性を除外できない)
あるいは,問題となるほど(および有意に)異質性が大きい研究におけるシステマティック・レビュー
このようなエビデンスは非確定的であるため,推奨度は“D”となる。
「EBMを用いた診療ガイドライン 作成・活用ガイド」(中山, 2004 )より一部改変

注: 本ガイドラインにおける推奨度分類は,「第1章-VII-作成法-5推奨度の決定基準」に示したように,メイン・ワーキング・グループで作成した推奨度基準を用いた。

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