ガイドライン

EBMの手法による
周産期ドメスティック・バイオレンスの支援ガイドライン

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第7章 推奨と解説


IV 女性は支援を求めるかたずねる

1.夫・パートナーとの関係を医療者に話すことについて,女性の意思を確認する

CQ 19: DVについて話すことについて,事前に,女性に意思確認をすべきか?
推奨度A 医療者とDVについて話し合うことに対する女性の意思を確認する。


解 説
DVスクリーニングが陽性であったときは,まず女性が夫・パートナーからの暴力について,医療者に話したい(話してもよい)と思っているかどうかを確認する必要がある。DVは,被害の密室化が問題視されているように,女性は,他の人に話すのは恥ずかしい,医療者から否定的に見られる,夫からの報復への恐れといった思いから,DVについて容易に打ち明けられないことが知られている(Ronnberg et al., 2000レベル5)。また,DV被害女性では,暴力によって本来の自己コントロール感および安全感が奪われている。したがって,女性からDVについて無理に聞き出したり,医療者の価値観や意見を押しつけたり,威圧的な態度を示すことは好ましくない。女性との信頼関係が築けないばかりか,女性と医療者の関係が対等の関係ではなく,上下関係になることでDVの根元をなす男性との支配関係の再現となる可能性がある。カナダ予防医学に関するタスクフォースによる「エビデンスが明確でない場合の意思決定基準」(表4)にはこのようなハイリスク・グループの特別なニーズに配慮することが項目としてあげられており,事前に女性の意思確認をすることは重要である。医療における被害女性の支援目標の一つは,女性が暴力によって失った自己コントロール感および安全感を確保することである。一つひとつのケアに関して,女性に選択肢を提示し,その意思を尊重することが最も重要である。


<例>
夫・パートナーとの関係について質問させてもらいましたが,もう少し状況をお伺いしたいと思っているのですが,いかがでしょうか?
夫・パートナーとのことなのですが,これからの妊娠や子育てに影響することなので,お話をお伺いしたいのですが,よろしいですか?



表4 カナダ予防医学に関するタスクフォース(2003年)12
エビデンスが明確でない場合の意思決定の基準
意思決定における患者自身の参加を促すこと
害を最小化すること
強い必要性が明らかな場合に関してのみ、大きな変化を主張すること
不要な「ラベリング」を避けること
益の不確かな高価な手技を避けること
疾病負担が大きい状況に焦点を当てること
ハイリスク・グループの特別のニーズに配慮すること


12 http://www.ctfphc.org/ ctfphc & methods.htm#Decision[2004-05-05]

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