ガイドライン

EBMの手法による
周産期ドメスティック・バイオレンスの支援ガイドライン

書誌情報
 
第4章 ドメスティック・バイオレンスの実態


III 社会環境


社会環境についての報告は7論文が採択され,コントロール群なしの介入研究1論文,横断研究5論文,症例集積1論文であった。

 まとめ

DV被害女性にとって現在の社会環境は,望ましい支援環境とは言えないことが報告されていた。
   「夫婦間の性的暴力に対する国民の認識の低さ」,「医療者の認識不足」,「診療記録に記録されない実状」,「ソーシャル・サービスの利用実態」,「病院移送拒否」,「望ましくない医療者のあり方」などが報告されていた。



<望ましい支援環境ではない現状>
まず,妻へのレイプ(夫婦間の性的暴力)に対する意識調査によると,一般の人々ではDV(夫婦間の性的暴力)の存在に対する認識度が低い実態が報告されている(Basile, 2002レベル3b)。
プライマリ・ケアを実施している医療者のDVに対する認識では,DVの発生割合は1%以下であると思っているものが,看護師の70%,医師の50%であった。また,問診の項目として喫煙や飲酒については必ず質問するのに対して,回答者の206名全員が,DVについては質問の必要性を認識していなかった(Sugg et al., 1999レベル4)。
また,DV被害者が身体的外傷のために病院救急部に来院するのは,午前9時から午後5時以外の,夜間から早朝の時間帯に集中しているが,この夜間の時間帯にソーシャル・サービスが提供されている病院はわずか11%であった(Birnbaum et al., 1996レベル4)。
スクリーニングでDV陽性と判断された女性の中で,家庭医のクリニックの診療記録に暴力について記載されていたのは14.6%に過ぎなかった(Coker et al., 2002レベル4)。
また移送患者の救急部門による受け入れ拒否に関しては,一般患者での拒否割合が7.1%であるのに対し,DV被害者の場合は23.4%(95%CI:11.3, 35.5)と高率であった(Husni et al., 2000レベル4)。

無理解な医療現場の現状とともに,被害女性からみた,望ましい,あるいは望ましくない医療者の態度に関する報告もあった(Hamberger et al., 1998レベル3b)。また,より新たな取り組みとしての,DV被害者への専門家の支援やフォローアップの実践の可能性を示した報告もある(Krasnoff et al., 2002レベル3b)。

 

書誌情報