ガイドライン

EBMの手法による
周産期ドメスティック・バイオレンスの支援ガイドライン

書誌情報
 
第4章 ドメスティック・バイオレンスの実態


I 周産期の被害実態

2. 周産期におけるDV被害の特徴

短期間に繰り返す妊娠や望まない妊娠
米国において,低所得者の思春期の女性100人を対象とした調査からは,短期間に繰り返す妊娠(Rapid Repeat Pregnancy)と暴力・虐待との関係が報告されている。対象者の43.6%が1年以内に妊娠しており,63.2%が1年半以内に妊娠していた。さらに,調査期間内での妊娠の発生割合を比較すると,「虐待あり」の人は「虐待なし」の人に比べて,OR 3.46(12カ月以内),OR 4.29(18カ月以内)と3〜4倍の妊娠の危険が高いという結果であった(Jacoby et al., 1999レベル4)。
また,米国14州にわたる妊婦34,835人に対する調査の結果,虐待被害割合は8.8%(95%CI:8.3, 9.3)であった。予定外の妊娠(望まない妊娠)であった妊婦の15.3%(95%CI:13.4, 17.2)に,妊娠期の虐待被害経験が認められたのに対し,計画的な妊娠(希望した妊娠)の妊婦における虐待被害経験割合は5.3%であった。計画的な妊娠の場合と,予定外の妊娠であった場合とを比較すると,身体的暴力を受けていた割合はそれぞれ5.3%,13.3%であり,虐待被害割合の比は2.5(95%CI:2.2, 2.8)であった。予定外の妊娠をした女性では,計画的な妊娠に比べて,虐待被害を経験している可能性が2.5倍あることを示唆している(Goodwin et al., 2000レベル4)。
同様に香港の報告でも,予定していた妊娠か予定外の妊娠かで,過去1年における虐待経験の割合を比較すると,予定外の妊娠に有意に被害割合が高いという報告がある(Leung et al., 1999レベル3b)。

性感染症(Sexual transmitted diseases:STD)・性器出血・人工妊娠中絶
米国の低収入層の妊婦744人を対象としたケース・コントロール研究では,虐待のあった妊婦のSTD罹患はOR 1.69(95%CI:1.12, 2.5),特に性的虐待のあった妊婦のSTD罹患はOR 2.14(95%CI:1.1, 4.03)であった。さらに,身体的暴力と性的暴力の両方があった場合は,OR 2.97(95%CI:1.49, 5.78)であった。つまりDV被害妊婦ではSTD罹患割合が高いという実態であった(Johnson & Hellerstedt, 2002レベル3b)。
また,性器出血で救急外来を訪れた妊婦のうち33.7%に虐待が認められたという報告もある(Greenberg et al.,1997レベル4)。
人工妊娠中絶を求める女性の実態を見ると,その39.5%に虐待があったと報告されていた。特に,被虐待歴のある女性では,ない女性に比べて,中絶の理由を「パートナーとの関係性の問題」とした人が有意に多かった(Glander et al., 1998レベル3b)。

DVによる殺人
米国では,殺人未遂被害者の25.8%が妊娠中に虐待を受けていたという実態が報告されている。また,虐待の結果,殺人未遂または殺人の被害者となった女性(ケース群)では,虐待を受けてはいたが,殺人未遂または殺人にまでは至らなかった女性(コントロール群)と比べて,妊娠中に虐待を受けていた人の割合が3倍であった(MacFarlane et al., 2002レベル4)。同一著者らの1995年の報告でも,虐待による殺人のリスクが指摘されている(MacFarlane et al., 1995レベル3b)。


 

書誌情報