ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

書誌情報
 
第XIII章 特殊な胆道炎


4. 肝内結石に伴う急性胆管炎,肝内区域性胆管炎
Q120. 急性胆管炎を伴う原疾患としての肝内結石症の診断は?

胆管炎症状を有し,超音波検査・CTを行って,肝内胆管枝の限局性の拡張や狭窄が認められた場合は肝内結石を疑う。確診のためには,直接胆道造影で結石の存在を確認する。その際に,胆汁の培養・細胞診検査を行うべきである。(推奨度B)

1)肝内結石症とは
左右肝管およびこれより上流の肝内胆管に結石が存在する疾患であり,原因不明のものが7〜8割を占める。 アジア諸国のなかでも発生頻度に差がみられ,環境因子も発症の一因と考えられている1)。 原因が推定できるものとしては手術などに伴う二次性のもの,胆道形成異常に伴うものなどがある。 特殊な病態として,東南アジアの風土病であるRecurrent pyogenic cholangitisとしても知られる,Oriental cholangitisがある。

2)肝内結石の疫学・成因
わが国において集計された1,708例の肝内結石症のうち急性胆管炎は8.5%に認められた2)。 結石の種類はビリルビンカルシウムが74.8%,コレステロール系石が13.1%である。 本疾患の成因はいまだ不明であるが,総胆管結石の形成にE. coliが関連するといわれているにもかかわらず,西欧には肝内結石症の発生がほとんどみられない事実から,胆道感染が単独の原因とは考えにくい。 寄生虫・低栄養が関連している場合もあると考えられている(レベル4)3)。 また肝吸虫(Clonorchis sinensis)症では,虫体が少数では無症状に経過するが,500〜1000虫となると,胆管閉塞,化膿性胆管炎,肝内結石などの病態が発症することもある(肝ジストマ症)。 本症の診断は糞便あるいは胆汁中虫卵の証明や,血液検査の好酸球増多が重要な所見である。日本における肝内結石症の多発地区である長崎県上五島地区における調査では,HLA抗原陽性(A26,B44,BW54,CW7,DR6)がhigh risk groupである。 このほか胆管上皮におけるムチン蛋白の発現が結石の形成に重要な役割を持つともされている4)

3)肝内結石症の予後
無症候性肝内結石症を長期間にわたって経過観察したところ,122例中14例(11.5%)に症状が発症している5)。 胆道鏡下切石治療が進歩する以前は,繰り返す胆管炎によって胆汁性肝硬変から肝不全に進行していた。経過中に胆管癌が合併することがある。 胆管癌の合併頻度は報告者によって異なるが,2.4〜17.1%である(レベル4)6,7,8)。 結石と癌の存在部位はほとんど同側であることから,繰り返す胆管炎や胆汁うっ滞が発癌の原因の一つになる6,9)

4)肝内結石症の診断
肝内結石の診断は,直接胆道造影で結石が肝内胆管に存在することを確認する。 腹痛,発熱,黄疸のいわゆるCharcotの3徴は約60%の症例に認められる(レベル4)10)。 ショックや意識障害を伴う重症例ではDICに進展することもある。 肝の特徴的な組織学的所見は,細胆管の増生とperiportal areaの炎症細胞浸潤である。
(1) 血液検査
白血球数増加,肝胆道系酵素の上昇,高ビリルビン血症が一般的にみられる。20%の症例に高アミラーゼ血症がみられる。
(2) 細菌学検査
胆汁中細菌の検出率は85%で,起因菌はE. coli, Klebsiella spp. Enterobacter spp. などのグラム陰性菌が多い。最近ではEnterococcus spp, P. aeruginosaなどが増加している2)
(3) 画像診断
  超音波検査診断
肝外胆管の著明な拡張,結石の存在,肝内門脈域のechogenicityの増加,肝内区域胆管枝の限局性の拡張または狭窄像を認める。しかし高輝度の胆泥が充満しているため,拡張胆管が描出できないというpitfallもある(レベル4)11)
  CT診断
CT診断は,肝内胆管の拡張,肝の区域性萎縮が認められる。肝障害が高度の症例では脾腫を見る場合もある(レベル4)12)。鋳型状に胆管内に粘土状の結石が充満する場合には,陽性像として結石を診断できないことがある。また前治療の影響でpneumobiliaがある場合は腹部超音波検査よりCT検査が有用である。
  直接胆道造影
胆管の拡張像と結石像を認める。ただし,肝内胆管は肝外胆管に比較して軽度の拡張にとどまることがある。胆管像はstraightening(直線化),rigidity(硬化),decreased arborization(分枝数の減少),increased branching angle(直角に近く分枝する),acute peripheral tapering(末梢側で急に細くなる),multiple focal strictures(多発性狭窄)などの所見がみられる(レベル4)13)


 

書誌情報