ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

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第IX章 急性胆管炎 -診断基準と重症度判定-


5. 鑑別診断
Q79. 急性胆嚢炎と鑑別を要する疾患は? 留意を要することは?

急性胆嚢炎と鑑別を要する疾患としては,まず,右上腹部の炎症性疾患(胃・十二指腸潰瘍,結腸憩室炎,急性膵炎など)があげられる。
消化器疾患に限らず,心疾患やFitz-Hugh-Curtis症候群など他領域の疾患も念頭に置くことが必要である。
胆嚢癌合併の可能性を念頭に置く必要がある。

急性腹症としての入院症例の中で,急性胆嚢炎の頻度は3〜10%である(レベル2a)1,2,11)。 急性胆嚢炎と鑑別を要する疾患は,すべての右上腹部炎症性疾患であり様々な疾患が報告されている(表10)(レベル4〜5)69,70,71,72,73,74)。胃・十二指腸潰瘍の穿孔例であっても,単純X線写真にて遊離ガス像が認められない場合があり,鑑別のために吸収性流動性造影剤(ガストログラフィン)による上部消化管造影が必要になることもある(レベル5)69,70)。 また,心筋梗塞や狭心症の疼痛は,急性胆嚢炎の疼痛とよく似ており,心電図などによる鑑別が必要である(レベル5)59,60)。 一方,急性胆嚢炎を合併した胆嚢癌では,炎症により癌の存在診断が困難なことが多い(レベル4)75,76,77,78,79,80,81,82)
急性胆嚢炎に近い症状を呈する疾患として,Fitz-Hugh-Curtis症候群を認識しておくことが重要である(レベル4)83,84)。 右上腹部痛を特徴とし,癒着を伴うperihepatitis(肝周囲炎)およびpelvic inflammatory disease(PID)を示す疾患で,激しい右上腹部痛と発熱により発症することがあり,急性胆嚢炎と鑑別を要する83)。 起炎菌として淋菌やクラミジアが検出される。
術後急性胆嚢炎の診断は,難しい場合も多く,発症時の正診率は63〜73%である。 非正診例では腹腔内膿瘍,縫合不全,急性腹膜炎,腸閉塞などと診断されることが多い。術後急性胆嚢炎では原疾患の手術に起因する合併症も鑑別疾患の対象となる(レベル4)85,86,87)。 また,非正診例では穿孔や壊死など重症な胆嚢炎の頻度が高く,特に穿孔例では術後急性胆嚢炎発症時の診断は困難である(レベル4)86)
気腫性胆嚢炎では,ガス産生菌の感染によって胆嚢壁内にガス像が出現する。 腹部単純X線において右上腹部に液体貯留を伴った異常なガス集積像を認める。 気腫性胆嚢炎が疑われる症例では,メッケル憩室症や十二指腸憩室,拡張した十二指腸,結腸肝弯曲部,消化管胆道瘻,膿瘍,後腹膜気腫,腹膜気腫などとの鑑別が必要である(レベル4)88,89)。 鑑別診断には超音波検査が有用で,気腫性胆嚢炎では粘膜内気腫が認められることが特徴である(レベル4)89)

表10 急性胆嚢炎の鑑別疾患
胆道疾患       腸疾患
   慢性胆嚢炎     急性虫垂炎
   (胆嚢捻転症)     結腸憩室炎
  胆嚢癌     腸閉塞症
  急性胆管炎     腸間膜血管閉塞症
膵疾患     過敏性大腸症候群
  急性膵炎     右側結腸癌,肝湾曲部
  膵癌     便秘症
肝疾患   心・血管疾患
  肝炎     虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞)
  肝膿瘍     解離性動脈瘤
  肝癌   肺疾患
  Fitz-Hugh-Curtis症候群     肺炎(右下葉) 
胃・十二指腸疾患     胸膜炎
  急性胃炎   泌尿器疾患
  急性胃粘膜病変     尿管結石
  胃・十二指腸潰瘍     腎盂腎炎(右)
  胃癌   その他
  逆流性食道炎(食道裂孔ヘルニア)     敗血症(原因が胆道系以外)
        溶血性貧血


 

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