ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

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第IV章 診療フローチャートと診療のポイント


2)急性胆道炎の診療のポイント
(1)どのような患者で急性胆道炎を疑うか?
急性胆道炎を疑うべき症状としては,発熱,悪寒,腹痛,黄疸,悪心,嘔吐,意識障害がある。 これらの症状を一つでも認める場合は急性胆道炎を疑って,診察,検査を進める必要がある。
急性胆管炎を最も疑うべき臨床徴候は発熱,悪寒,腹痛,黄疸である。 Charcot3徴(発熱,腹痛,黄疸)は,1987年にCharcot1)が急性胆管炎を肝臓熱徴候として初めて記載した際に取り上げたものであるが,3徴をすべて満たすのは,50〜70%程度で(レベル2b〜4)2,3,4,5)である。 Charcot3徴にショックと意識障害を加えたReynolds5徴は,1959年にReynoldsとDargan6)が急性閉塞性胆管炎を定義した際に取り上げたもので,本邦では重症胆管炎の徴候としてよく用いられるが,ショックや意識障害に関しては急性胆管炎の際に生じるのは30%以下(レベル2b〜4)2,3,4,5)である。
急性胆嚢炎の臨床症状としては,腹痛(右上腹部痛),悪心・嘔吐,発熱がある(レベル2b〜4)7,8,9)。 急性胆嚢炎に特異的なMurphy signは特異度が79〜96%と高い(レベル2b〜3b)7,9)

(2)最初に施行すべき検査は?
血液検査では,白血球数,CRP,AST,ALT,ALP,γ-GTP,ビリルビン,急性膵炎との鑑別に有用なアミラーゼ,重症度判定に必要な血小板数,尿素窒素,クレアチニンなどを測定する。
画像診断では,超音波検査は急性胆道炎が疑われるすべての症例において最初に行われるべき検査である。 超音波専門医以外の救急担当医により施行された場合でも満足すべき診断能を有している(レベル1b)10,11)。 CT,MRI(MRCPも含む)のいずれかも有用であるし,単純X線写真は,イレウス,消化管穿孔,他疾患との鑑別の上でも重要である。

(3)鑑別すべき疾患は?
急性胆管炎と鑑別すべき疾患としては,急性胆嚢炎,胃十二指腸潰瘍,急性膵炎,急性肝炎などがある。
急性胆嚢炎と鑑別すべき疾患としては,胃十二指腸潰瘍,胆嚢癌,Fitz-Hugh-Curtis症候群,狭心症,心筋梗塞などがる。

(4)急性胆管炎と診断できる所見は?

急性胆管炎診断基準(「第V章/1)急性胆管炎の診断基準」参照)
  A.   1.発熱*
2.腹痛(右季肋部または上腹部)
3.黄疸
  B.   4.ALP,γ-GTPの上昇
5.白血球数,GRPの上昇
6.画像所見(胆管拡張,狭窄,結石)
  疑診:
  確診:
Aのいずれか+Bの2項目を満たすもの
(1)Aのすべてを満たすもの(Charcot3徴)
(2)Aのいずれか+Bのすべてを満たすもの
ただし,急性肝炎や急性腹症が除外できることとする。
*悪寒・戦慄を伴う場合もある。


(5)急性胆嚢炎と診断できる所見は?

急性胆嚢炎の診断基準(「第IX章/1)急性胆嚢炎の診断基準」参照)
  A.   右季肋部痛(心窩部痛),圧痛,筋性防御,Murphy sign
  B.   発熱,白血球数またはCRPの上昇
  C.   急性胆嚢炎の特徴的画像検査所見
  疑診:
  確診:
AのいずれかならびにBのいずれかを認めるもの
上記疑診に加え,Cを確認したもの
ただし,急性肝炎や他の急性腹症,慢性胆嚢炎が除外できるものとする。


*急性胆嚢炎の特徴的画像検査所見

超音波検査:sonographic Murphy sign(超音波プローブによる胆嚢圧迫による疼痛),胆嚢壁肥厚( >4mm),胆嚢腫大(長軸径 >8cm,短軸径 > 4cm),嵌頓した胆嚢結石,デブリエコー,胆嚢周囲液体貯留,胆嚢壁sonolucent layer,不整な多層構造を呈する低エコー帯,ドプラシグナル。

CT:胆嚢壁肥厚,胆嚢周囲液体貯留,胆嚢腫大,胆嚢周囲脂肪織内の線状高吸収域。

MRI:胆嚢結石,pericholecystic high signal,胆嚢腫大,胆嚢壁肥厚,が急性胆嚢炎の特徴的所見である。

胆道シンチグラフィー(HIDA scan: technetium hepatobiliary iminodiacetic acid scan):急性胆嚢炎の診断に有用な検査の一つであるが,本邦ではあまり用いられていない。

 

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