ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

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第II章 本ガイドライン作成の必要性と特徴


4. 急性胆嚢炎の診断と治療
ワーキンググループは急性胆嚢炎の診断に必須の検査を,末梢血白血球数・血中CRP・超音波検査とした(推奨度A :「第IX章/Q67.急性胆嚢炎の診断に必要な血液検査は?/Q71.急性胆嚢炎を疑った場合,まず行う画像検査は?」参照)。 さらに重症度判定のために必要な検査としてビリルビン・尿素窒素・クレアチニンの測定(推奨度A :「第IX章/Q68.急性胆嚢炎の重症度判定に必要な血液検査は?」参照),胆管炎や総胆管結石の合併を把握するための検査としてビリルビンや肝・胆道系酵素の測定(推奨度A :「第IX章/Q69.急性胆嚢炎の診療におけるビリルビン,肝・胆道系酵素の血中濃度測定の意義は?」参照),膵炎の合併を把握するための検査としてアミラーゼの測定(推奨度A :「第IX章/Q70.急性胆嚢炎の診療におけるアミラーゼの血中値測定の意義は?」参照)などを推奨した。 なお,X線CTは超音波検査と比較して診断能に劣るとの結論から,必ずしも全例で施行する必要はないが超音波検査を補完する検査として,あるいは膿瘍などの合併症を評価する手段として推奨した(推奨度B :「第IX章/Q74.急性胆嚢炎の診療においてどのような場合にCTを撮影するべきか? 」参照)。 ERCPはかつて胆嚢摘出術の術前評価法として広く行われていたが,MRCPやDIC-CT等の非侵襲的な検査法の台頭や手術手技の向上によって,その診断的有用性は失われつつある。 さらに内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージも,経皮経肝的胆嚢ドレナージ(PTGBD:percutaneous transhepatic gallbladder drainage)や経皮経肝的胆嚢穿刺吸引療法(PTGBA:percutaneous transhepatic gallbladder aspiration)の有効性が認められつつある現在,その適応はごく限られると考え,推奨しなかった。 有用性を示す臨床研究が多数存在し欧米で急性胆嚢炎の検査法の第一選択として認められている胆道シンチは,本邦では一般的ではないため,あえて推奨しなかった。

軽症胆嚢炎は保存的治療で軽快する場合もあるが,急性胆嚢炎の90%以上が胆嚢結石を合併しているうえに,半年から数年間の間に10〜50%が再発するため,最終的に胆嚢摘出術を行うことが望ましい。 早期手術(発症から72時間以内の手術)は強固な癒着が少ないために手術時期として適している一方,発症後2週間前後は癒着のために手術が困難なことがある。 さらに様々な無作為化比較対照試験(RCT)の結果,発症後早期の腹腔鏡手術は待機的手術や開腹手術と比較して,合併症を増加させることなく患者の苦痛をいち早く取り去ることができ,さらに医療費を節減し在院日数を短縮できる優れた治療法である可能性が示唆されている。 したがって,ガイドラインは急性胆嚢炎の診断された症例に対して,早期の胆嚢摘出術を推奨した(推奨度B :「第X章/Q87.急性胆嚢炎における緊急あるいは早期の手術やドレナージの適応基準は?」参照)。ただし術者の技量を十分考慮しながら安全に手術を施行することが何よりも重要であり,術者が未熟な場合や操作が困難な場合には安全な開腹手術を選択するべきである(推奨度A :「第XII章/Q100.手術術式は,腹腔鏡下胆嚢摘出術か開腹下胆嚢摘出術か?」参照)。

ハイリスク患者に対して経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)は,腹腔鏡下胆嚢摘出術より安全かつ有用性であることが,多くの症例集積研究によって示されている。 わが国でもPTGBDは広く普及しており,ハイリスク患者だけでなくリスクの低い患者に対しても,急性期に胆嚢ドレナージ術(PTGBD,PTGBA)を行い炎症が鎮静化した後に手術を行うという治療方針を採る施設が多い。 しかし議論の結果ワーキンググループは,わが国でもより多くの症例に対して早期手術を行うべきであるという結論に達した。すなわち可能な限り早期手術を検討し,何らかの理由で手術が行えない場合にのみ経皮的ドレナージ術を施行するというものである(推奨度B :「第X章/Q87.急性胆嚢炎における緊急あるいは早期の手術やドレナージの適応基準は?」参照)。 勿論ハイリスク症例やその他の事情により手術が施行できない場合には,PTGBDが適応となるが,現在PTGBDが第一選択となるハイリスク患者の定義ははっきりしない。

 

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