ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

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第II章 本ガイドライン作成の必要性と特徴


2. 診断基準(スタンダード)の必要性
1)急性胆管炎の診断基準と重症度判定
臨床研究をレビューした結果,急性胆管炎の定義は,臨床徴候のみに基づくものから胆管閉塞の有無や胆汁の性状を重視したものまで,様々であった。 これらの知見を踏まえ,われわれは急性胆管炎の定義についてディスカッションを行った。 その結果,胆道閉塞により胆汁感染をきたした病態を「急性胆管炎」,そして可及的早期に胆道減圧を行わないと救命できない病態を,最重症の胆管炎とすることで現在専門家の間に一定のコンセンサスが得られているという結論に達した。 それでは,このような病態を同定するための診断基準はどのようなものだろうか。 従来は,「Charcot3徴(腹痛・発熱・黄疸)」が急性胆管炎の診断基準として扱われてきた。 しかし,実際に急性胆管炎症例のうち三徴を満たす症例は,せいぜい70%程度である。 1959年にReynoldsらが急性閉塞性胆管炎の定義として提唱した「Reynolds5徴」に至っては,わずか数 %の症例にみられるのみである。 また「急性胆管炎」の間接的な病態である胆道閉塞を画像的に証明することはできても,本態である「胆汁感染」を客観的に評価する臨床検査法はない。

ワーキンググループは,既存の研究における定義を考慮しつつ,急性胆管炎の診断基準を策定した(表1)。 策定の第一の目標は,急性胆管炎を非侵襲的,簡便,かつ早期的に診断することである。 この診断基準は無作為化比較対照試験(RCT)に基づくものではないが,頻回なる討論会において吟味され結論が得られたものである。 今後その妥当性や臨床的有用性を評価することも必要であろう。

表1 急性胆管炎の診断基準(「第V章/1)急性胆管炎の診断基準」参照)
  A.   1.発熱*
2.腹痛(右季肋部または上腹部)
3.黄疸
  B.   4.ALP,γ-GTPの上昇
5.白血球数,GRPの上昇
6.画像所見(胆管拡張,狭窄,結石)
  疑診:
  確診:
Aのいずれか+Bの2項目を満たすもの
(1)Aのすべてを満たすもの(Charcot3徴)
(2)Aのいずれか+Bのすべてを満たすもの
ただし,急性肝炎や急性腹症が除外できることとする。
*悪寒・戦慄を伴う場合もある。

重症急性胆管炎は速やかに胆道ドレナージが行われない限り,不幸な転帰をたどる。ワーキンググループは,重症例を同定し迅速に胆道ドレナージを施行するために,重症度分類を策定した。文献レビューの結果,既存の研究で定義されてきた重症急性胆管炎の特徴は,1)保存的治療に抵抗,2)臓器不全の合併,3)早急な胆道ドレナージの必要性の3つであった。さらに「死亡,AOSC(急性閉塞性化膿性胆管炎)や重症のリスクと関連する因子」として,高ビリルビン血症,低アルブミン血症,臓器不全(急性腎不全・ショック・血小板減少),エンドトキシン血症/敗血症,高熱などがあげられた。また「併存疾患」「急性膵炎の合併」「悪性腫瘍に続発した胆管炎」「高齢」「小児」なども,重症化の危険因子である。 以上の事実を踏まえ,以下に示す重症度基準を考案した(表2)。

表2  急性胆管炎の重症度判定基準(「第V章/Q24.急性胆管炎の重症度の定義と重症度判定基準は?」参照)
重症急性胆管炎
急性胆管炎の内,以下のいずれかを伴う場合は「重症」である。
 (1) ショック
(2) 菌血症
(3) 意識障害
(4) 急性腎不全
中等症急性胆管炎
急性胆管炎の内,以下のいずれかを伴う場合は「中等症」とする。
(1) 黄疸(ビリルビン >2.0mg/dL)
(2) 低アルブミン血症(アルブミン <3.0g/dL)
(3) 腎機能障害(クレアチニン >1.5mg/dL,尿素窒素 >20mg/dL)
(4) 血小板数減少*( <12万/mm3
(5) 39℃ 以上の高熱
軽症急性胆管炎
急性胆管炎のうち,「重症」,「中等症」の基準を満たさないものを「軽症」とする
*肝硬変等の基礎疾患でも血小板減少をきたすことがあり注意する。
付記:重症例では急性呼吸不全の合併を考慮する必要がある。

 

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