ガイドライン

(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

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第I章 序


厚生労働科学研究医療技術評価総合研究事業 急性胆道炎の診療ガイドラインの作成,普及に関する研究班(主任研究者 高田忠敬)は2003年から開始され,日本腹部救急医学会,日本胆道学会,日本肝胆膵外科学会との協力により,急性胆道炎のガイドライン作成とその普及を目的に内科,外科,救急,集中治療,疫学関係の医師を中心に活動を行い,今回ここに急性胆道炎の診療ガイドラインを策定した。 日本腹部救急医学会は約6,000名の会員からなり,外科,内科,救急科,集中治療科,放射線科をはじめとする腹部救急診療に携わる専門家によって構成されている。この学会の目的は腹部救急疾患領域で質の高い医療,教育,研究を促進することにある。また,日本胆道学会は約2,500名の会員からなり,胆道疾患の診療,研究に従事する内科,外科医師を中心に構成されている。 また,日本肝胆膵外科学会は約2,500名の会員からなり,肝臓,膵臓,胆道疾患の診療,研究に従事する外科系医師を中心に構成されている。

急性胆道炎領域においては,治療に関するレベルの高いエビデンスが乏しいところに大きな問題があった。 これに対し当研究班では,エビデンスのみにとらわれず英知を集め関連する文献を有効に用いることで,よりよいガイドラインが作れるのではないかと考えている。

研究を進めるに伴い,われわれが今回目指した胆道炎に焦点を絞った診療指針となるべきガイドラインは,日本はもとより世界にも存在せず,さらに世界共通の診断基準や重症度診断基準も存在しないことが判明した。 胆管炎については「Charcot3徴」が今日でも用いられているが,報告は1877年と既に100年を経ており,臨床的に「Charcot3徴」を満たすものは50〜70% にすぎないと報告されている。胆嚢炎については「Murphy徴候」が感度50〜70%,特異度79〜96% と診断に有効と考えられるが,この方法が日本国内で広く普及しているとはいいがたい。 これに加え,教科書や参考書などに一般に用いられている徴候や疾患概念については,原著と大きく異なっているものが多く,世界的に共通の概念になり得るかどうかは疑問である。 そこで今回,胆道炎に関するあやふやな定義,疾患概念,治療法を明確にし,統一された基準を作成し,これが広く認知され,普及することが重要と考えられた。
以上をふまえ,本ガイドラインは,胆道炎の各領域の診療に加え,今回新たに急性胆道炎の診療指針,診断基準,重症度判定基準を作成した。 作成に当たっては,系統的,網羅的に抽出したエビデンスを基に,現在の日本の医療状況(診療機器,診療技術他)を考慮した。 さらに,日本腹部救急医学会,日本胆道学会,日本肝胆膵外科学会においてコンセンサス会議を行い,十分な検討をくりかえした。

本ガイドラインは急性胆道炎診療に関する初めてのガイドラインとなる。 その臨床医療への影響の大きさと社会的責任の重さを常に考慮し,何より患者に対して最良の診療を提供することに役立つよう望むものである。

2005年9月

厚生労働科学研究医療技術評価総合研究事業
急性胆道炎の診療ガイドライン作成,普及に関する研究班
主任研究者 高田忠敬

 

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