ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第6章 穿刺局所療法


CQ48 穿刺局所療法はどのような患者に行うべきか?

推 奨
穿刺局所療法の良い適応は,Child-Pugh分類のAあるいはBの肝機能,腫瘍径3cm以下,腫瘍数3個以下である。
(グレードC1)

■サイエンティフィックステートメント
日本肝癌研究会の追跡調査からの解析(n=12,888)では,単発2cm未満の症例で臨床病期(CS)I(現行のLiver damage A)では肝切除の治療成績がPEITより良好(p=0.01)であるが,CSII(Liver damage B)以上では肝切除とPEITは有意差はない。一方,単発で2cmより大きい症例では肝切除の治療成績が良好である。2cmより大きいCSII(Liver damage B)においても肝切除の治療成績が良好である(LF001781) Level 2a)。
また,国内18施設の肝細胞癌患者(n=3,225)の後ろ向き研究では,3cm以下3個以下の症例でCSI(Liver damage A)では5年生存率は肝切除とPEITで同等。CSII(Liver damage B)ではPEITの生存率が高い(LF004722) Level 2b)。
肝硬変を伴った単発5cm以下の肝細胞癌患者の後ろ向き研究では,肝切除(n=120),PEIT(n=155),無治療(n=116)に分けて検討したところ,Child-Pugh分類のA,Bともに3年生存率は肝切除とPEITで同等であった(LF006003) Level 2b)。
Huangらは,3cm以下2個以下Child-Pugh分類のAあるいはBの肝細胞癌76人に対し肝切除とPEITのRCTを行い,再発率,生存率で両者に差がなかったと報告している(LF101344) Level 1b)。しかし,癌死が両群合わせて8人のみであり,観察期間が不十分であると考えられる。Chenらは,5cm以下単発の180人を対象に肝切除とRFAのRCTを行い,再発率,生存率に差がなかったと報告している(LF101355) Level 1b)。しかし,RFAに割り付けられた90人中19人が同意を撤回して切除を受けており,比較妥当性に疑問が残る。
Murakamiらは,3cm以下3個以下あるいは5cm以下単発の肝細胞癌患者のうち,RFAあるいはTACEで加療された連続258人について局所再発率を検討したところ,有意にRFAがTACEに勝っていた(p=0.013)(LF118406) Level 2a)と報告している。
また,PEITの局所再発率は腫瘍径3cmを超えると高くなる(LF015557) Level 2a)。

■解 説
肝細胞癌治療における穿刺局所療法を肝切除に代わるファーストラインの治療とし得るかについて,現在のところ結論は出ていない。現在発表されている中で最も症例数が多いのは,日本肝癌研究会の追跡調査を解析したものであるが,肝機能は肝障害度でマッチさせたのみ,腫瘍径も2cm以下,2〜5cmとカテゴリー分けしたものである。同一の肝障害度でもより肝機能の良いものが,腫瘍径のカテゴリーが同じでもより大きいものが切除されている可能性が高く,比較妥当性に疑問が残る。また,PEITと切除の比較であり,より良好な生存率が得られる可能性があるRFAと比較した場合は,結果が異なる可能性がある。その後2編のRCTが公表されているが,いずれもデザインに問題があり,この問題に結論を出すのは性急であろう。
適応を切除不能な患者に限定すると,穿刺局所療法の適応は,サードラインである肝動脈塞栓術との比較で決定される。Murakamiらは,3cm以下3個以下あるいは5cm以下単発の肝細胞癌患者のうち,RFAあるいはTACEで加療された連続258人について局所再発率を検討したところ,有意にRFAがTACEに勝っていた(p=0.013)(LF118406) Level 2a)と報告している。この範囲の腫瘍でTACE単独と局所療法単独の生存率を比較したRCTは存在しないが,このエビデンスをもって3cm以下3個以下の切除不能肝細胞癌の治療として局所療法を推奨することとする。
3cmを超える腫瘍に対する局所療法の適応について,PEITを対象とした多くの研究が3cm以下3個以下をその適応としており,3cmを超えるとPEITの局所再発率は高くなると報告されている。熱凝固療法であるRFAにおいては,焼灼範囲は,穿刺回数を増やすことによって原理的には拡大可能であるが,焼灼範囲,穿刺回数の増加は,合併症の増加につながることが予想される。多くのRFA電極の焼灼範囲が3cm程度であることも考慮し,RFAの適応についても3cm以下3個以下を踏襲することとした。

■参考文献
1) LF00178 Arii S, Yamaoka Y, Futagawa S, Inoue K, Kobayashi K, Kojiro M, et al. Results of surgical and nonsurgical treatment for small-sized hepatocellular carcinomas:a retrospective and nationwide survey in Japan. The Liver Cancer Study Group of Japan. Hepatology 2000;32(6):1224-9.
2) LF00472 Ryu M, Shimamura Y, Kinoshita T, Konishi M, Kawano N, Iwasaki M, et al. Therapeutic results of resection, transcatheter arterial embolization and percutaneous transhepatic ethanol injection in 3225 patients with hepatocellular carcinoma:a retrospective multicenter study. Jpn J Clin Oncol 1997;27(4):251-7.
3) LF00600 Livraghi T, Bolondi L, Buscarini L, Cottone M, Mazziotti A, Morabito A, et al. No treatment, resection and ethanol injection in hepatocellular carcinoma:a retrospective analysis of survival in 391 patients with cirrhosis. Italian Cooperative HCC Study Group. J Hepatol 1995;22(5):522-6.
4) LF10134 Huang GT, Lee PH, Tsang YM, Lai MY, Yang PM, Hu RH, et al. Percutaneous ethanol injection versus surgical resection for the treatment of small hepatocellular carcinoma:a prospective study. Ann Surg 2005;242(1):36-42.
5) LF10135 Chen MS, Li JQ, Zheng Y, Guo RP, Liang HH, Zhang YQ, et al. A prospective randomized trial comparing percutaneous local ablative therapy and partial hepatectomy for small hepatocellular carcinoma. Ann Surg 2006;243(3):321-8.
6) LF11840 Murakami T, Ishimaru H, Sakamoto I, Uetani M, Matsuoka Y, Daikoku M, et al. Percutaneous radiofrequency ablation and transcatheter arterial chemoembolization for hypervascular hepatocellular carcinoma:rate and risk factors for local recurrence. Cardiovasc Intervent Radiol 2007;30(4):696-704.
7) LF01555 Ishii H, Okada S, Nose H, Okusaka T, Yoshimori M, Takayama T, et al. Local recurrence of hepatocellular carcinoma after percutaneous ethanol injection. Cancer 1996;77(9):1792-6.

 

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