ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第6章 穿刺局所療法


● はじめに
肝細胞癌の局所治療として,最近四半世紀の間に種々の治療法が開発されてきた。1979年に山田らによって肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization:TAE)が開発され,これが肝細胞癌の局所療法の有効性を明らかにした最初の治療法といえる。
次に,腹部超音波診断機器の普及と進歩とともに,1983年に杉浦らにより経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy:PEIT)が開発された。PEITはその後開発された超音波映像下に行われる種々の局所治療の原点といえる治療である。本法は手技が簡便で局注針もエタノールも安価であったため,瞬く間に日本のみならず世界へと広がり,肝細胞癌治療の主役として高い評価を受けるようになった。しかし,PEITはエタノールという液体を注入する治療であるため,エタノールが腫瘍内に均一に拡散せず,隔壁や被膜がある場合は通過できず,腫瘍の残存と局所再発の問題が残った。
こうした PEITの欠点を克服するべく,挿入した針からマイクロ波やラジオ波を発生させて腫瘍を熱凝固させる治療法が開発された。従来から外科領域で使用されていたマイクロ波を経皮的に応用した経皮的マイクロ波凝固療法(percutaneous microwave coagulation therapy:PMCT)を1994年に関らが発表した。
また,1993年,Rossiらが小肝細胞癌に対し経皮的にラジオ波熱凝固療法(radiofrequency ablation:RFA)を行い良好な治療効果を得たと報告し,にわかにラジオ波による肝細胞癌治療が注目されるようになった。わが国でも1999年以降多くの施設で施行されている。RFAはPMCTより1回の治療あたりで獲得する壊死範囲が大きいという理由からPMCTを凌駕する勢いで導入されてきた。RFAはわが国では2004年4月からようやく保険適応となった。2005年版肝癌診療ガイドラインの発表に前後してPEITとRFAを比較したRCTが国の内外から発表され,いずれもRFAがPEITに比較して生命予後を延長するという結果であった。これらのエビデンスにより現在 RFAが穿刺局所療法の中で標準治療とされるに至っている。
この項ではPEIT,PMCT,RFAに関し,2007年6月までの段階のエビデンスをまとめたい。
■文献の選択
局所治療の分野を,治療法別に,以下の区分に分けた。
1)経皮的エタノール注入療法 2)マイクロ波凝固療法 3)ラジオ波熱凝固療法
それぞれに対して,1983年以降2007年6月までに,MEDLINEおよび医学中央雑誌に収載されている文献リストを作成し,ガイドラインの策定に有用と思われる文献を抽出した。さらに,それらの文献抄録を読み,原著にさかのぼる必要のある文献をリストアップし,できるだけエビデンスレベルの高いものを選出した。評価は論文形式,症例数,研究デザインを基に選択した。

 

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