ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第4章 化学療法・放射線治療


第2節 放射線治療

CQ40 肝細胞癌の遠隔転移に対しては放射線治療が適応となるか?

推 奨
骨転移による疼痛の緩和には,放射線治療は一般に有用であり,治療を行うよう勧められる。線量分割スケジュールについては,単回照射・分割照射のいずれでも有効性に明らかな差はみられない。
(グレードB)
また,脳転移に対する標準治療の一つとして全脳照射を行うよう勧められる。
(グレードB)
単発性脳転移の場合には,全脳照射に加えて定位放射線照射も行うことが勧められ,転移病変が2〜4個の場合にも定位放射線照射の追加を検討することが望ましい。
(グレードB)

■サイエンティフィックステートメント
肝細胞癌のみの遠隔転移を対象としたエビデンスレベルの高い臨床試験は行われていない。そのため,現時点で得られるエビデンスレベルの高い報告として,原発臓器を特定せずに検索して得られた研究のデータを基に記載をした。
有痛性骨転移に対する放射線治療の除痛率は50〜90%と高く(LF117321) Level 1a,LF117212) Level 1a),無治療の場合と直接比較したRCTは存在しないものの,疼痛緩和を目的として標準的な治療として行われている。線量分割方法を比較する Radiation Therapy Oncology Group の多施設共同研究(LF117303) Level 1b)では,孤発性転移に対しては40.5Gy/3週と20Gy/1週を,多発性転移に対しては15Gy/1週〜30Gy/2週の4種類の分割法を比較した。孤発性転移での部分寛解率は85%と82%,多発性転移での部分寛解率は78〜87%で,分割方法の差による寛解率の有意な差はみられなかった。寛解までの期間や寛解維持期間も両群に有意差はなかった。この結果を基に,短期間で低線量の治療は,長期間の治療と同等の有効性があると考えられるようになった。メタアナリシス(LF117321) Level 1a)でもこの結論は支持され,疼痛緩和を治療の目的とする場合には単回照射が適切であると考えられる。ただし,単回照射群では再照射率が高いことから,分割照射による治療も検討する必要がある。
脳転移については,Hortonらが1971年に報告したECOGのRCT(LF117454) Level 1b)の結果により,全脳照射が生存期間を延長させ,全身状態も改善することが明らかとなった。全脳照射についても,20Gy/1週・30Gy/2週・40Gy/4週など,現在でもしばしば用いられる線量分割方法を比較するRCTが報告され,いずれの報告でも,生存期間・症状の改善率・全身状態保持期間などの指標として,特に有効な線量分割方法を特定することはできていない。また,近年は定位放射線照射の技術が進歩し,広く行われるようになっている。最大径2.5cm以下で2〜4病変を有する脳転移症例に対しては,標準治療である全脳照射に定位放射線照射を追加することにより,有意な生存期間の改善はみられないものの,脳内病変制御率を有意に向上させることをKondziolkaら(LF117465) Level 1b)が単施設でのRCTによって示した。またAndrewsら(LF117346) Level 1b)は,最大径4cm以下で1〜3病変を有する脳転移症例に対する定位放射線照射を追加する意義を多施設RCTによって調べ,単発性脳転移症例については定位放射線照射が有意に生存期間を延長させることを示した。一方,病変数の少ない脳転移症例に対する治療選択肢として,全脳照射を省略して定位放射線照射単独治療を行うことの妥当性をJROSG99-1のRCT(LF11735 Level7) 1b)が調べている。1〜4病変を有する脳転移症例では全脳照射の省略による生存期間の短縮はみられないものの,全脳照射を併用することで脳内再発率が有意に低下することが示された。以上より,4個以下の病変に対しては定位放射線照射単独治療も治療選択肢の一つとなるが,現在でも標準治療として全脳照射は重要であると考えられる。

■解 説
遠隔転移に対する治療に際して重要な点は,腫瘍による症状の緩和および予防である。特に,脳転移例では腫瘍制御が生存に直結することとなるため,適切な治療方針の選択は極めて重要である。ただし上述のとおり,肝細胞癌の遠隔転移例を多く組み込んで行われている研究は少ないため,肝細胞癌の遠隔転移に対してこれらの記載が当てはまるかどうかは明らかではない。本Clinical Questionにおける記載を適応するに際しては,この点に注意が必要である。

■参考文献
1) LF11732 Wu JS, Wong R, Johnston M, Bezjak A, Whelan T. Meta-analysis of dose-fractionation radiotherapy trials for the palliation of painful bone metastases. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003;55(3):594-605.
2) LF11721 McQuay HJ, Collins SL, Carroll D, Moore RA. Radiotherapy for the palliation of painful bone metastases. Cochrane Database Syst Rev 2000(2):CD001793.
3) LF11730 Tong D, Gillick L, Hendrickson FR. The palliation of symptomatic osseous metastases:final results of the Study by the Radiation Therapy Oncology Group. Cancer 1982;50(5):893-9.
4) LF11745 Horton J, Baxter DH, Olson KB. The management of metastases to the brain by irradiation and corticosteroids. Am J Roentgenol Radium Ther Nucl Med 1971;111(2):334-6.
5) LF11746 Kondziolka D, Patel A, Lunsford LD, Kassam A, Flickinger JC. Stereotactic radiosurgery plus whole brain radiotherapy versus radiotherapy alone for patients with multiple brain metastases. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1999;45(2):427-34.
6) LF11734 Andrews DW, Scott CB, Sperduto PW, Flanders AE, Gaspar LE, Schell MC, et al. Whole brain radiation therapy with or without stereotactic radiosurgery boost for patients with one to three brain metastases:phaseIII results of the RTOG 9508 randomised trial. Lancet 2004;363(9422):1665-72.
7) LF11735 Aoyama H, Shirato H, Tago M, Nakagawa K, Toyoda T, Hatano K, et al. Stereotactic radiosurgery plus whole-brain radiation therapy vs stereotactic radiosurgery alone for treatment of brain metastases:a randomized controlled trial. Jama 2006;295(21):2483-91.

 

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