ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第4章 化学療法・放射線治療


第1節 化学療法

CQ32 全身化学療法と比べて肝動注化学療法は有用か?

推 奨
全身化学療法と比較し肝動注化学療法は有用という十分な科学的根拠がない。
(グレードC1)

■サイエンティフィックステートメント
肝動注化学療法と全身化学療法による肝細胞癌への薬剤の集積についてシスプラチン(CDDP)を用いた比較では,肝動注化学療法でより薬剤が腫瘍に集積した(LF018851) Level 4)。ドキソルビシンによる肝動注化学療法と全身化学療法を比較した RCT では,抗腫瘍効果(奏効率)は肝動注化学療法が優れていた(60% vs. 44.1%,表3)が,生存期間は両群に統計学的有意差を認めなかった(LF022152) Level 1b)。皮下埋め込み型動注ポートを用いた肝動注化学療法は,入院期間,費用,QOLの面で優れていた(LF024193) Level 2a,LF026534) Level 4)。

■解 説
肝動注化学療法は,その手技の特殊性はあるものの,高濃度の抗癌剤を肝細胞癌に直接投与することが可能であり,また全身の抗癌剤の濃度も低く抑えられ,全身への副作用の頻度は低くなるものと考えられている。
肝細胞癌化学療法の投与法として,全身化学療法と肝動注化学療法を比較したRCTが1件だけあったが,動注化学療法が有用であるという結論には至っていなかった。また,それぞれ化学療法を施行している論文の奏効率についても比較した。症例数や対象症例選択などの違いはあるものの,全身化学療法の奏効率は0〜39%,肝動注化学療法の奏効率は14〜71%の報告であり,肝動注化学療法が高い傾向があった(表1〜3参照)。これらの奏効率と1件のRCTでの奏効率の差と入院期間,費用,QOLの面でも優れているという報告より,肝動注化学療法がより有用であると判断した。しかし,RCT があるものの1件のみで,各群35例程度の症例数であること,生存期間でも有意差はみられず,肝動注の有用性の結論は出てないため,この推奨の強さをグレードC1とした。
副作用の点で肝動注化学療法は,全身化学療法に比較して肝機能への影響やカテーテル合併症などが起こると考えられるが,副作用について比較検討した論文はなかった。
特殊な方法として,経皮的肝灌流化学療法が開発され良好な成績が報告されている(LF101305) Level 4)。

■参考文献
1) LF01885 Court WS, Order SE, Siegel JA, Johnson E, DeNittis AS, Principato R, et al. Remission and survival following monthly intraarterial cisplatinum in nonresectable hepatoma. Cancer Invest 2002;20(5-6):613-25.
2) LF02215 Tzoracoleftherakis EE, Spiliotis JD, Kyriakopoulou T, Kakkos SK. Intra-arterial versus systemic chemotherapy for non-operable hepatocellular carcinoma. Hepatogastroenterology 1999;46(26):1122-5.
3) LF02419 Sakai Y, Izumi N, Tazawa J, Yoshida T, Sakai H, Yauchi T, et al. Treatment for advanced hepatocellular carcinoma by transarterial chemotherapy using reservoirs or one-shot arterial chemotherapy. J Chemother 1997;9(5):347-51.
4) LF02653 Iwamiya T, Sawada S, Ohta Y. Repeated arterial infusion chemotherapy for inoperable hepatocellular carcinoma using an implantable drug delivery system. Cancer Chemother Pharmacol 1994;33 Suppl:S134-8.
5) LF10130 Ku Y, Iwasaki T, Tominaga M, Fukumoto T, Takahashi T, Kido M, et al. Reductive surgery plus percutaneous isolated hepatic perfusion for multiple advanced hepatocellular carcinoma. Ann Surg 2004;239(1):53-60.

 

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