ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第3章 手術


第3節 周術期管理

CQ23 周術期の血液製剤(赤血球輸血,凍結血漿など)使用はどうするか?

推 奨
同種赤血球輸血はできるだけ避ける。
(グレードB)

凍結血漿の使用を推奨する。
(グレードC1)

■サイエンティフィックステートメント
肝切除術周術期の同種輸血はできるだけ避けるべきであるという報告が多い(LF006901) Level 2b,LF004532) Level 3,LF111453) Level 2b)。その理由は,癌の再発を促進する可能性,高ビリルビン血症や肝不全をきたしやすい,ヘマトクリット値が低いほうが肝の微小循環に望ましい,などが挙げられている。一方で輸血の有無により再発率は変わらないという報告もある(LF000314) Level 3)。
同種赤血球輸血を回避するため自己輸血(術中回収血を含めて)は安全で,癌の再発を高めることなく,有効であると報告されている(LF007105) Level 3)。
肝切除時の凍結血漿の使用はこれを支持する論文が多い(LF009176) Level 3)。しかし,高いエビデンスに基づいた検証はない。

■解 説
一般に輸血のない手術が推奨されるのは論を待たない。特に癌の手術において,輸血の有無が問題になるのは,輸血による免疫抑制状態導入の可能性が考えられるからである(Opelz, et al. Improvement of kidney graft survival with increased numbers of blood transfusion. N Engl J Med 1978)。輸血による免疫抑制状態が導入され,癌の再発が促進されることは容易に想像できるストーリーである。輸血の有無による再発率の違いはさまざまな癌の手術において報告されているが,再発率に差がないという報告も多い。
手術において無輸血で周術期を乗り切るため最低限維持すべきヘマトクリット値に関しては,循環動態が保たれる限り20%までの低下は受容できると報告されているが,エビデンスの高いデータではない(LF009176) Level 3)。
肝切除における新鮮凍結血漿の使用は,厚生労働省による「血液製剤の使用指針」では医療経済,医療資源上の理由から推奨されていないが,臨床経験上推奨される(LF009176) Level 3)。その意義は凝固因子の補充や有効血漿量,血漿浸透圧の維持,感染防御能の強化である。使用量の目安は凝固因子の最低量の維持である。

■参考文献
1) LF00690 Yamamoto J, Kosuge T, Takayama T, Shimada K, Yamasaki S, Ozaki H, et al. Perioperative blood transfusion promotes recurrence of hepatocellular carcinoma after hepatectomy. Surgery 1994;115(3):303-9.
2) LF00453 Fujimoto J, Okamoto E, Yamanaka N, Tanaka T, Tanaka W. Adverse effect of perioperative blood transfusions on survival after hepatic resection for hepatocellular carcinoma. Hepatogastroenterology 1997;44(17):1390-6.
3) LF11145 Poon RT, Fan ST, Lo CM, Liu CL, Lam CM, Yuen WK, et al. Improving perioperative outcome expands the role of hepatectomy in management of benign and malignant hepatobiliary diseases:analysis of 1222 consecutive patients from a prospective database. Ann Surg 2004;240(4):698-708.
4) LF00031 Kwon AH, Matsui Y, Kamiyama Y. Perioperative blood transfusion in hepatocellular carcinomas:influence of immunologic profile and recurrence free survival. Cancer 2001;91(4):771-8.
5) LF00710 Fujimoto J, Okamoto E, Yamanaka N, Oriyama T, Furukawa K, Kawamura E, et al. Efficacy of autotransfusion in hepatectomy for hepatocellular carcinoma. Arch Surg 1993;128(9):1065-9.
6) LF00917 Makuuchi M, Takayama T, Gunven P, Kosuge T, Yamazaki S, Hasegawa H. Restrictive versus liberal blood transfusion policy for hepatectomies in cirrhotic patients. World J Surg 1989;13(5):644-8.

 

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