ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第3章 手術


第1節 手術適応・術式・再発補助療法

CQ19 再発肝細胞癌に対する有効な治療は?

推 奨
再発肝細胞癌に対しては,初回肝細胞癌に対するのと同じ基準で治療方針を決定することが推奨される。すなわち肝切除が標準治療であり,特に肝機能良好例(非硬変肝症例またはChild分類のA症例)における単発症例では再切除が推奨される。
(グレードB)

■サイエンティフィックステートメント
再発肝細胞癌に対する再切除例と非切除治療例の成績の比較では,再切除群が予後良好と報告されており(LF005051) Level 2b,LF002432) Level 2b,LF112693) Level 2b),また再肝切除後の生存予後は,初回肝切除後のそれとほぼ同等であるとされている(LF003434) Level 2b,LF117995) Level 2b)。再肝切除後の予後因子としては初回肝切除時と同様に,脈管侵襲や,残肝機能,腫瘍数が挙げられているが(LF002432) Level 2b,LF112693) Level 2b,LF003434) Level 2b,LF117995) Level 2b,LF113756) Level 4,LF115697) Level 4),この他に再発までの期間が予後因子であるとする報告が多い(LF002432) Level 2b,LF112693) Level 2b,LF117995) Level 2b,LF113756) Level 4)。ただしこれらの報告では,再発例のうち実際に切除の適応となった症例は11〜30%である。再発肝細胞癌に対する穿刺局所療法については,Level 4の報告があるのみである(LF117938) Level 4,LF118149) Level 4)。TACEについてもLevel 4の報告があるのみであるが(LF1206310) Level 4),切除不能の初発肝細胞癌に対するACEのLevel 1aのエビデンスをそのまま演繹し,少なくとも再発が肝に限局しているときには TACE は生存延長に寄与するとしてよい。再発肝細胞癌に対する肝移植の是非についてはLevel 4の報告があるのみで,再肝切除との比較の検討はされていない。

■解 説
再発肝細胞癌の治療を論じる際には初発時にどのような治療を行ったかが問題となるが,本項では標準治療である肝切除後の再発のみを取り上げた。肝細胞癌に対する肝切除術後,おおよそ2年で50%,5年で80%の症例に再発を認めるとされている(LF1142911) Level 2b)。肝細胞癌に対する肝切除後再発の特徴は肝内再発の頻度が多いことであり,初回再発の90%以上が肝内再発で,またそのほとんどが肝単独再発であるとされる。肝切除後の肝再発については,他の多くの臓器の癌の再発と同様の機序による転移に加え,切除後の残存肝からの新しい肝細胞癌の発生(異時多中心性再発)が寄与するとされているが,日常の臨床病理学的な検討からこれらを鑑別することは困難である。
肝外病変を伴う再発肝細胞癌に対しては,肝内再発の有無およびその機序によらず根治的な治療は期待できず,治療方針は初発時のそれと変わるものではない。
肝単独再発の場合,その機序が異時多中心性再発によるものであれば,これらに対する治療方針は,理論的には初発時のそれと同じになる。実際には肝内転移による再発との鑑別が困難であるため,初発の肝細胞癌に対する治療方針とどのように異なる方針をとるべきかが問題となる。
肝単独再発に対して治療群と未治療群,あるいは肝切除と他の治療を比較した検討はLevel 2bにものにとどまるが,これらはすべてそれぞれの治療法の適応症例の選択というバイアスがかかっているため,結果の解釈には慎重になる必要がある。再発肝細胞癌に対する再切除術に関する論文(LF005051) Level 2b)では,再切除例(n=50)が非再切除例(n=117)に比較して多変量解析の結果有意に予後良好であったと報告されている。また再切除による手術死亡率の増加は認められないが,Child分類のB,C,術中大量出血が手術死亡に関与したとして,積極的な再肝切除の適応として肝機能良好(Child分類のA)な単発例が推奨されるとしている。またLF002432)(Level 2b)は再切除例(n=11)と非再切除例(n=94)の検討の結果,残肝機能,腫瘍数,再発までの期間,肝外病巣の有無,治療法(切除vs.非切除治療)が,LF112693)(Level 2b)でも再切除例(n=34)と非再切除例(n=252)で検討した結果,初回および再発時の腫瘍数,肝外転移の有無,腫瘍径,再発までの期間,治療法(切除vs.非切除治療)が,それぞれ独立した予後因子であったと報告している。以上より,再発肝細胞癌に対する治療方針としては可能ならば切除を第一選択として考慮するのが妥当であり,その適応に関しては初発肝細胞癌と同様の基準を用いて,すなわち肝外病巣の有無,肝機能,および腫瘍数により決定すればよいと考えられる。
再発肝細胞癌に対する再肝切除症例の予後因子の検討については,さらに40〜80例程度のLevel 2bおよび4の報告がある。これらの報告では,再肝切除後の生存予後は,同じ施設の初発肝細胞癌に対する切除後のそれとほぼ同等である。初回切除から再肝切除までの期間がこれらの比較では無視されていることを考慮すると,これらの良好な結果は再肝切除の対象となる症例の選択バイアスを反映したものと考えられる。おそらく初発時と同様の適応基準により症例選択をすることにより,事実上,異時多中心性発生による再発症例を選択して切除を施行していると考えられる。切除後の予後因子としては,初回肝切除時と同様に脈管侵襲の有無が共通して挙げられており,また初回切除から再発までの期間(1年未満と以上で区分)が予後因子となっているとする報告が多いのも,上記の推測の傍証と考えられる。
初回肝切除後の再発肝細胞癌に対する穿刺局所療法の検討はLevel 4の報告がいくつかあり,予後因子の検討では初回肝切除時と同様に腫瘤径やAFP値,また再肝切除症例と同様に初回肝切除から再発までの期間が影響するとするものが多い(LF117938) Level 4,LF118149) Level 4)。再発肝細胞癌に対するTACE治療の検討は,Level 4 のものがあるが,予後因子の検討はされてはいない(LF1206310) Level 4)。ただし切除不能(対象外)の肝細胞癌に対するTACEの有効性については,Level 1bの報告により実証済みであり,再発症例の過半数を占めると考えられる切除対象外の再発肝細胞癌に対しては,TACEが第一選択の治療法となる。
肝移植は理論上最も根治的な肝細胞癌に対する治療であるが,脳死肝ドナーの圧倒的な不足という見地からはその適応を狭めざるを得ないという実情がある。そこで初発肝細胞癌に対しては肝切除を行い,その後の経過中に再発を認め腫瘤が移植の適応基準内にとどまっている場合に移植を行うという方針はsalvage transplantationと呼ばれ,その是非が広く議論されている。しかしこれらの議論はすべて初発の肝細胞癌に対して切除と移植の双方が適応であった場合に,最初から移植を行うか,あるいは初回は肝切除を行うかという点に関してのものであり,再発肝細胞癌に対して,再肝切除と移植(salvage transplantation)のどちらを選択すべきかの見地からの検討はされていない。したがってこのCQに関してこれらはすべてLevel 4の論文となるが,初発が肝移植の適応範囲内にあった症例に対して肝切除を施行した後の再発のうち,肝移植の適応となる症例はどのくらいか,という問いにはある程度の答えが導かれる。LF1205912)(Level 4)では,初回肝切除時の平均年齢が50歳で,B型肝炎由来の症例が87%での検討(n=135)であるが,再発例のうち移植の適応となるのは67%であったと報告している(再発時の年齢については言及していない)。LF1149813)(Level 4)では,C型肝炎由来が61%で平均年齢は62歳(n=37)での検討であり,再発18例のうち13例(72%)が移植の適応範囲内であったが,70歳以下という施設基準も考慮した適応症例は6例(33%)であったと報告している。

■参考文献
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