ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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第2章 診断およびサーベイランス


第3節 画像診断

CQ13 肝細胞癌の確定診断のために針生検による組織診は必要か?

推 奨
肝細胞癌の診断が画像診断で確定される場合には組織診断の必要はない。
(グレードD)

画像所見が非典型な場合に生検による組織診の適応があるが,この場合にも,個々の症例に応じて慎重にその適応を決めるべきである。
(グレードC1)

■サイエンティフィックステートメント
肝細胞癌に対する超音波ガイド下針生検の診断感度は,88.1~90%(LF104651) Level 1,LF000872) Level 1),陽性的中率(positive predictive value:PPV)100%,陰性的中率(negative predictive value:NPV)13~51.7%,正診率89.4~91%(LF104651) Level 1,LF000872) Level 1)とされる。偽陰性(false negative)が,10~10.6%(LF000872) Level 1,LF104651) Level 1)にみられた。10mm以下の肝細胞癌に対する細径針生検(fine needle biopsy)の診断感度は72.7%(24/33結節)であった(LF104651) Level 1)。術前針生検を施行せず,総合画像診断に基づいて切除した160例(225良悪性病変)のうち,156例(97.5%)(221病変―98.2%)で術前画像診断が正しかったとする報告がある(LF022163) Level 1)。
針生検に伴う重篤な合併症として,針穿刺経路播種(needle tract seeding)と出血がある。前者の発生頻度は1.6~3.4%とされている(LF000872) Level 1,LF025074) Level 1,LF057705) Level 1)。針生検からneedle tract seedingの発生までの期間は5~36カ月(LF000872) Level 1,LF025074) Level 1,LF057705) Level 1)であった。

■解 説
硬変肝にみられる20mm以上の結節性病変の大多数は,造影検査(dynamic CT/MRI,超音波)で肝細胞癌の確定診断ができるので,針生検の必要性は低い。しかし,10~20mmになると,肝細胞癌に特異的な画像所見が得られない場合があり,必要に応じて針生検が行われる。10mm以下になると超音波による標的病変の検出能が再生結節などの存在により低下し,sampling errorが増えてくる。また,標的病変の組織が正確に採取されても,高分化肝細胞癌と高度異型結節などの境界病変との鑑別診断が必ずしも容易でなく,肝臓病理のエキスパートの診断を必要とすることが少なくない。針生検の陽性的中率はほぼ100%と高いが,陰性的中率は13~51.7%と低いので,生検陰性の場合,肝細胞癌を除外できない。注意深い観察が必要とされる。
また,針生検を行う場合,needle tract seedingの発生を可及的に少なくするため,中分化ないし低分化癌の多い中型~大型の肝細胞癌の穿刺を避け,高分化癌の頻度の高い20mm以下の結節に絞って行うとする意見が多い。画像で確定診断のできない病変の針生検にあたっては,患者の損得を考慮した慎重な対応が必要である。
2005年に発表された米国肝臓病学会のガイドライン(LF121416))では,肝硬変例を対象に超音波を用いたスクリーニングで発見された結節に対し,次の条件下で針生検の施行を勧めている。2cm以上の場合は,1つのdynamic検査(CT/MRI/US)で肝細胞癌に特徴的な造影像vascular profile(動脈相で多血性hypervascular,門脈/静脈相で染まり抜けwashout)が得られない場合(AFP>200ng/mlの場合,針生検は不要),または非硬変肝に発生した場合。1~2cmでは,2つのdynamic検査でも特徴的な画像の得られない場合,または2つの検査間で造影所見が合致しない場合。一方,1cm以下の場合は,超音波による3~6カ月毎のフォローアップとしている。

■参考文献
1) LF10465 Caturelli E, Solmi L, Anti M, Fusilli S, Roselli P, Andriulli A, et al. Ultrasound guided fine needle biopsy of early hepatocellular carcinoma complicating liver cirrhosis:a multicentre study. Gut 2004;53(9):1356-62.
2) LF00087 Durand F, Regimbeau JM, Belghiti J, Sauvanet A, Vilgrain V, Terris B, et al. Assessment of the benefits and risks of percutaneous biopsy before surgical resection of hepatocellular carcinoma. J Hepatol 2001;35(2):254-8.
3) LF02216 Torzilli G, Minagawa M, Takayama T, Inoue K, Hui AM, Kubota K, et al. Accurate preoperative evaluation of liver mass lesions without fine-needle biopsy. Hepatology 1999;30(4):889-93.
4) LF02507 Huang GT, Sheu JC, Yang PM, Lee HS, Wang TH, Chen DS. Ultrasound-guided cutting biopsy for the diagnosis of hepatocellular carcinoma- -a study based on 420 patients. J Hepatol 1996;25(3):334-8.
5) LF05770 Kim SH, Lim HK, Lee WJ, Cho JM, Jang HJ. Needle-tract implantation in hepatocellular carcinoma:frequency and CT findings after biopsy with a 19.5-gauge automated biopsy gun. Abdom Imaging 2000;25(3):246-50.
6) LF12141 Bruix J, Sherman M. Management of hepatocellular carcinoma. Hepatology 2005;42 (5):1208-36.

 

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