ガイドライン

(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

書誌情報
 
肝細胞癌サーベイランスアルゴリズム・
診断アルゴリズム(図1)の解説


1.サーベイランス開始にあたって
サーベイランスを開始するかどうかの決定は,対象者のリスク評価から始まる。B型慢性肝炎,C型慢性肝炎,肝硬変のいずれかが存在すれば肝細胞癌の高危険群といえる。さらに,年齢,性別,糖尿病の有無,BMI,AST,ALT,血小板,飲酒量,HBV-DNA量(B型慢性肝炎患者)等のリスク因子を勘案して検査間隔を決定する。なかでも B型肝硬変,C型肝硬変患者は,超高危険群に属する。
2.サーベイランスの実際
サーベイランスの至適間隔に明確なエビデンスはない。検査間隔を短くすることのデメリットは,コストであるが,リスクが低い集団ほど一人の癌患者を見つけるためのコストは上昇する。ここでは,一つの案として,超高危険群に対しては,3~4カ月に1回の超音波検査,高危険群に対しては,6カ月に1回の超音波検査を行うことを提案する。腫瘍マーカー検査については,AFPおよびPIVKA-IIを超高危険群では3~4カ月に1回,高危険群では6カ月に1回の測定を推奨する。AFP値が20ng/mlを超えている場合は,AFP-L3分画を測定する。AFP-L3分画の値が15%を超える場合は,肝細胞癌が存在する可能性が高い。AFP-L3分画が15%以下である場合も,AFPの測定間隔を3カ月以内にすることを推奨する。
3.超音波検査で結節性病変を指摘
超音波検査で結節性病変が新たに指摘された場合,dynamic CTあるいは,dynamic MRIを撮像し,鑑別診断を行う。
4.Dynamic CT/MRIによる診断
典型的肝細胞癌像とは,動脈相で高吸収域として描出され,門脈・平衡相で相対的に低吸収域となる結節と定義される。それ以外の結節は,すべて非典型的であるが,肝内胆管癌,転移性肝癌,その他の良性肝腫瘍等が積極的に疑われる場合,おのおのの精査を行う。
5.Dynamic CT/MRIで結節性病変を指摘
腫瘍マーカー高値のため,あるいはサーベイランス目的で行った dynamic CT/MRI検査で非典型的腫瘍像が描出された場合,まず超音波検査の再検を行い,描出できた場合は,腫瘍径2cmを区切りとして経過観察を行う。超音波で描出できない場合,dynamic CTあるいは,dynamic MRIにて腫瘍径の経過観察を行う。
6.腫瘍マーカーの上昇
AFP の持続的上昇あるいは,200ng/ml以上の上昇,PIVKA-IIの40mAU/ml以上の上昇,AFPL3分画の15%以上の上昇を認めた場合,超音波検査で腫瘍が検出できなくても,dynamic CTあるいは,dynamic MRIを撮像することを考慮する。
7.腫瘍径
腫瘍径2cm以下を一応の基準として,dynamic CTあるいは,dynamic MRIで典型的肝細胞癌の画像を呈さず,さらに他の肝悪性腫瘍が否定的である場合,経過観察を行うことを提案する。
8.腫瘍径の経過観察
腫瘍径の経過観察は,超音波で描出可能な場合,dynamic CTあるいはdynamic MRIでのみ描出可能な場合は,描出可能な検査で行う。検査間隔は,3カ月を一応の目安とする。腫瘍径に有意な増大傾向がみられた場合,治療の適応となる。
9 .Option検査
血管造影下CT,肝特異性造影剤MRI(SPIO-MRIなど),造影超音波,肝腫瘍生検は,optionalな検査として,精査目的に担当医の裁量で行う。

図1 肝細胞癌サーベイランスアルゴリズム・診断アルゴリズム
図1 肝細胞癌サーベイランスアルゴリズム・診断アルゴリズム
超音波の描出不良等を理由に超音波で結節の描出がなくてもCT/MRIを撮影する場合もある。腎機能低下例,造影剤アレルギー例などでは造影超音波検査も考慮される。

 

書誌情報