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(旧版) 肝癌診療ガイドライン2009年版

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2009年版 前文


肝癌診療ガイドライン初版(2005年版)は平成14〜15年度厚生労働省診療ガイドライン支援事業のサポートを受け研究班(班長 幕内雅敏)が組織され,2004年6月に草稿が完成した。日本肝癌研究会で公開後,2005年2月に刊行された。わが国初の科学的根拠に基づく診療ガイドラインとして高い評価を受け,肝癌診療の現場で広く利用されている。
Evidence based medicine(EBM)の手法を用いて作成された診療ガイドラインは一般に3〜4年ごとに新しいエビデンスを取り入れて改訂される必要があるといわれている。本ガイドライン改訂作業は日本肝臓学会の事業として2006年11月に開始された。改訂委員会の構成は日本肝臓学会会員の肝癌診療専門家が中心となり,外科医6名,内科医4名,放射線科医4名,臨床統計学者1名で,15名中11名が初版からの留任となった。新たにコメディカル2名(看護師1名,放射線技師1名)も委員に加わった。このほかに実務担当者として7名の専門委員の協力を仰いだ。
検討領域は肝細胞癌の予防,診断およびサーベイランス,手術,化学療法,肝動脈塞栓療法,穿刺局所療法に加え,放射線療法が新たに加わった。初版のリサーチクエスチョン(RQ)58を再検討し,廃止・統合・新設などの作業を行い,改訂版では51のクリニカルクエスチョン(CQ:読み替え)とした。改訂のなかったCQは2件のみで,42件の改訂が行われ,7つのCQが新設された。各改訂委員と専門委員はそれぞれの専門領域を分担した。コメディカル委員には改訂作業全般を通覧いただき,委員会においてそれぞれの立場からの意見を述べていただいた。
ガイドライン作成の原則は初版同様にEBMの方法論を尊重し,「専門家の個人的な意見」をできるだけ排除してエビデンスに基づいたコンセンサスを得るよう努めた。エビデンス集作成のための基礎となる文献は改訂版においてもMEDLINEが中心となった。初版の検索範囲が2002年11月までであったため,今回はそれ以降で2007年6月までのエビデンスを追加した。しかし,新設されたCQについては2002年以前までさかのぼる必要があった。初版では領域別に検索式をたてて一次論文選択を行い,二次選択の段階でRQを組み上げていくという作業を行ったが,改訂版ではCQをまず確定してからCQごとの論文検索を行った。検索総論文数は2,950,一次選択で576に絞り込まれ,エビデンスレベルや内容を評価した後に最終的には532論文が採用された。このうち初版と同じ論文が282,新規採用が250論文となった。初版とは検索方法が異なるものの,論文検索の系統性と再現性は担保された形となっている。このため,検索範囲に入らなかった2007年7月以降の論文(エビデンス)は,いかに重要であっても推奨には含めず,解説などの附記にとどめることにした。
診断(サーベイランス)と治療のアルゴリズムはガイドラインの中心となる部分であり,アンケート調査でも実際に最もよく利用されていることが明らかになっている。初版発刊以降に学会などで発表された改訂についての意見を参考にしながら,新たなエビデンスを加えて活発な議論が交わされ,簡便さや使いやすさを重視しながら改訂が行われた。
2009年3月までに合計8回の改訂委員会が開催され,同4月に草稿が完成した。5〜6月の期間,日本肝臓学会会員にWeb上で内容が公開され,パブリックコメントを求めて修正が行われた。さらに第45回日本肝臓学会(神戸市開催)で報告・討議された後に内容が確定した。現在英訳作業が進行中で,2010年初頭に日本肝臓学会機関誌『Hepatology Research』に英語版ガイドラインが掲載される予定である。また外部評価委員会によるガイドライン改訂版の独立した評価も進行中である。さらに,第3版に向けた次の改訂作業も2〜3年以内に開始され,2007年7月以降のエビデンスが加えられる見込みである。
今回の改訂では初版作成時のような厚生労働科学研究費の支援が得られず,日本肝臓学会の限られた予算の中からの資金補助で作業を行なった。日常診療でお忙しい中,文字通り「手弁当」で膨大な改訂作業を完遂していただいた改訂委員,専門委員,実務協力者の皆様に心より感謝いたします。また,本改訂事業に多大なるご理解とご協力をいただきました日本肝臓学会 井廻道夫理事長,林紀夫前理事長をはじめ各理事の皆様,箱守春樹事務局長に深謝いたします。最後に論文検索をはじめ実務作業のすべてをサポートいただいた(財)国際医学情報センター 岡部三輪子氏,秦 卓子氏,平石敦子氏,鈴木博道氏,金原出版 森 崇氏,吉田真美子氏,藤田和香子氏に御礼申し上げます。

2009年8月
日本赤十字社医療センター
幕内雅敏
東京大学医学部肝胆膵外科・人工臓器移植外科
國土典宏

 

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