ガイドライン

EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

書誌情報
II 尿失禁の基礎知識
尿失禁の基礎知識

4. 診断
(5) 尿流動態検査

尿失禁タイプの診断は、前述のように十分な問診により大多数の症例では可能であるが、自覚症状のみの評価では診断を誤る例も少なからず存在する。尿流動態検査は特殊な検査機器を必要とする専門的検査であるが、尿失禁の正確な病態の診断、膀胱機能障害の他覚的評価において有用である。

<1> 尿流測定(Uroflowmetry)
尿流測定は、患者が排尿すると、機器が自動的に尿流カーブを描き、非侵襲的に尿排出のスクリーニング検査ができるものである。尿失禁の診断における有用性は低いが、尿排出障害を引き起こす前立腺肥大症や排尿筋低活動を示す神経因性膀胱のスクリーニングに有用である。

<2> 膀胱内圧測定(Cystometry、図2)
経尿道的に膀胱内にカテーテルを挿入し、膀胱内へ生食を注入し、膀胱を充満しながら膀胱内圧測定を行うもので、膀胱蓄尿機能を評価することができる。膀胱容量や蓄尿期の膀胱不随意収縮(排尿筋過活動)について他覚的に評価できる。

<3> ビデオウロダイナミクス(Videourodynamics)
膀胱内に造影剤を注入しながら透視下に尿流動態検査を行う検査をビデオウロダイナミクスといい、下部尿路の機能のみならず形態的変化も同時に評価することができ、より多くの情報を得ることができる。

<4> 尿道内圧測定(Urethral pressure profile)
尿道内圧測定は、安静時の尿道括約筋緊張を評価する検査であり、腹圧性尿失禁における括約筋緊張の評価に用いられる。

<5> Abdominal Leak Point Pressure(ALPP)
経尿道的に膀胱内の圧を測定し、膀胱充満時に腹圧を加え、尿漏出が起こる時の最も低い膀胱内圧を測定するものである(図7)。女性腹圧性尿失禁において、尿道過可動と内因性括約筋不全を鑑別するのに用いられる。ALPP < 60cmH2O では内因性括約筋不全、>90cmH2O では尿道過可動が疑われる9)

図7 Abdominal Leak Point Pressure (ALPP)
図7 Abdominal Leak Point Pressure (ALPP)
(A) : 膀胱内に造影剤を200mL程度注入しながら膀胱内圧測定を施行し、以後valsalva法(怒責)、および咳にて膀胱内圧を上昇させ、透視下に尿漏出を確認した瞬間に尿漏出の印(▲)を付ける。尿漏出が起こる最も低い膀胱内圧をALPPとする。
(B) : 可能な場合はALPP測定時のトレース部の時間軸を引き延ばすことにより、より正確な圧の判読が可能となる。本例ではALPPは40cmH20と判読できる。 Valsalva法時には判読は容易であるが、咳による圧上昇は極めて短時間であり、正確な漏出時の圧の判読は困難である。

<6> 圧・尿流検査(Pressure-flow study)
排尿時の膀胱内圧、腹圧(直腸内圧)、膀胱排尿筋圧(膀胱内圧─腹圧)、尿流率を同時に測定する検査で、膀胱排尿筋圧と尿流率の関係から、下部尿路閉塞の程度と膀胱収縮機能について評価する検査である。尿失禁の診断における意義は少ないが、外科的治療前の排尿筋収縮機能、尿排出障害の有無の評価に有用である。
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