ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

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第VIII章  急性膵炎の治療

 


6.選択的消化管除菌(selective decontamination of the digestive tract : SDD)



CQ52  : 重症例に対する選択的消化管除菌(SDD)は必要か?
選択的消化管除菌(SDD)は重症例の感染性合併症および死亡率を低下させる根拠に乏しい: 推奨度C2



重症急性膵炎における致死的な合併症である膵および膵周囲の感染症の起炎菌はグラム陰性菌を中心とする腸内細菌群である(レベル3b) 90) 。これら膵局所感染症を予防するために非吸収性抗菌薬を投与し,腸内細菌,主としてグラム陰性菌を選択的に根絶しようとするのが重症急性膵炎に対するSDDの目的である。2004年に実施された急性膵炎全国調査ではSDD施行率は急性膵炎全症例ではわずかに5.2%,重症例に限定しても14.4%に過ぎなかった(レベル4) 91) 。急性膵炎以外の様々な病態ではグラム陰性菌によるblood stream infectionや下気道感染症の予防に効果が示されているが(レベル1a) 92) ,現在までに急性膵炎を対象として行われたSDD のRCT(レベル1b) 93) は1件のみであり,その後の追試もない。このRCTは102例の重症急性膵炎を対象にデザインされ,SDD群はnorfloxacin,colistin,amphotericinの3剤を経口投与し,同成分の軟膏を歯肉や気管切開部へ塗布,さらにその軟膏と同成分を連日注腸し,cefotaximeの全身投与も短期間併用している(一次性内因感染の阻止目的)。対照群では感染が認められた場合にのみ抗菌薬が投与された。その結果,SDD施行群では92%の症例において腸管におけるグラム陰性菌のcolonizationを抑えることに成功し,感染性膵合併症が有意に減少したとされる。死亡率に関しては全体ではSDD群で改善傾向を示したのみであったが(対象群35%,SDD施行群22%,p=0.19),ImrieスコアおよびCT Grade(Balthazar-Ranson)による重症度評価を加味した多変量解析では,SDDの生命予後に対する有効性が証明された(OR=0.3,p=0.048)。彼らはその中止基準として,気管挿管チューブの抜去,酸素投与の中止,一般病棟への転棟等,新たな感染の危険性の低下を挙げている。


 

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