ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

書誌情報
第VI章  急性膵炎の診断

 


6.胆石性急性膵炎の成因診断


CQ24 : 胆石性急性膵炎とは?
総胆管結石が原因となって惹起された急性膵炎である。


総胆管結石が乳頭部(膵・胆管共通管部)に嵌頓し,膵液の流出障害をきたして発症する機転の他,胆管炎の波及による発症機転も考えられている。血中ALP,γGTP,トランスアミナーゼの上昇があり,超音波検査で総胆管結石を描出する場合は,診断は容易であるが,急性膵炎時には腸管ガス像の存在など超音波検査における総胆管描出能が低下すること,急性膵炎を惹起する総胆管結石は小結石が多く超音波検査で描出しにくいこと,すでに総胆管結石が乳頭部から十二指腸へ排泄された後(passed stone)である場合があること,などから,診断が難しい場合も多い(「第III章 用語の定義」の項を参照)。



CQ25 : 胆石性急性膵炎の診断に必要な検査は?
まず, 血液検査と超音波検査を行う:推奨度A


血液検査で黄疸やALP,γGTP,トランスアミナーゼの上昇があり,(体外式)超音波検査(以下,超音波検査)で総胆管結石を描出する場合には,胆石性急性膵炎の診断が可能である。しかし,超音波検査では必ずしも全例で描出できるわけではない。血液検査で黄疸や肝胆道系酵素値の上昇があり,胆石性急性膵炎の疑いが強いにもかかわらず,超音波検査で総胆管結石を描出できない場合には,超音波検査を繰り返し行うか,あるいは,より感度・特異度の高いMRCP,EUSを行う。内視鏡的乳頭処置を前提として,ERCPを行う場合もある。


1)血液検査

血中ALTが150IU/L以上であるか(感度48〜93%,特異度34〜96%,陽性尤度比1.4〜12.0,陰性尤度比1.8〜4.9)(レベル1c〜2b)93),104),あるいは,血液検査で,ビリルビン,ALP,γGTP,ALT,ALT/AST比の5項目のうち,3項目以上に異常がある場合には(感度85%,特異度69%,陽性尤度比2.7,陰性尤度比4.6)105),胆石性膵炎である可能性が高い。超音波検査と血液検査を組み合わせると,感度95〜98%,特異度100%,陽性尤度比∞,陰性尤度比20.0〜50.0で胆石性急性膵炎との成因診断が可能である(レベル2b)91),105),106)
血中トリプシノーゲン-1は胆石性急性膵炎に特異的に上昇するため,血中トリプシン-2-α1アンチトリプシン複合体とトリプシノーゲン-1の比が,胆石性急性膵炎の成因診断に有用との報告がある(レベル1b)107)


2)超音波検査

前述のように,超音波検査と血液生化学検査を組み合わせると,ほとんどの場合に(感度95〜98%,特異度100%,陽性尤度比∞,陰性尤度比20.0〜50.0),胆石性急性膵炎との成因診断が可能である(レベル2b)105),106)。なお,超音波検査における総胆管結石の描出率は20〜90%と報告により差があり,超音波検査で胆道結石や胆管拡張が認められなくても胆石性膵炎を否定することはできないため(レベル1b〜4)97),108),109),初回検査で胆道結石を描出しない場合でも,胆石性膵炎を疑う場合には超音波検査を繰り返し行うか,あるいはMRCPを施行する必要がある。


3)CT

胆道結石はCTでは描出されない場合も多く(感度40〜53%),CTは胆石性急性膵炎の診断には適してはいない(レベル1b)105),109)


4)MRI/MRCP

総胆管結石描出の感度は,超音波検査,CTではそれぞれ20%,40%であるのに対して,MRI/MRCPでは80%であり,内視鏡的乳頭処置(ERCP/ES)の適応決定法としてMRI/MRCPを勧める意見がある(レベル1b)110)。ERCPと比して,乳頭部の操作を必要としないので,急性膵炎の病状を増悪させる危険性がなく非侵襲的であることから,比較的早期にも撮像が可能である。


5)EUS

EUSは,超音波検査に比して,総胆管結石の描出能が優れている(レベル1b〜2b)97),98),99)。超音波検査で成因が明らかではない場合,EUSの施行により59〜78%の症例に総胆管結石が描出される(レベル1b〜3b)98),100),101)。胆道結石の精査法としては,ERCPとEUSの2つがgold standardとされているが,ERCPでは胆道造影ができないことがある(14%)のに対して,EUSは全例で胆道精査が可能である(レベル1b)111)。また,前述のように,急性膵炎発作時に行うERCPは炎症をさらに悪化させる可能性もある。


6)ERCP

黄疸,肝障害を認め,総胆管結石の存在が強く疑われる場合には,胆石性膵炎の内視鏡的治療を前提としてERCP/ESを行う。ERCP/ESの施行体制がない場合には,対応可能な施設へ転送する。ERCPの総胆管結石の描出能は90%であったのに対して,Intraductal US(IDUS)を併用すると95%となり,ERCP施行時にはIDUSの併用を勧める意見もある(レベル1b)109)。ただし,胆石性膵炎に対してERCP/ESを行う際には,膵管造影を可能な限り回避することが望ましい。

 

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