ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

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第VI章  急性膵炎の診断

 


2.臨床症状・徴候


CQ12 : どのような臨床症状・徴候の患者に対して急性膵炎を疑うか?
急性発症の上腹部を中心にした腹痛と圧痛を認める患者では急性膵炎も鑑別に挙げる
推奨度A


急性膵炎患者の90%以上が腹痛を訴えると報告され(表VI-1, 2)(レベル3b〜5)3),4),5),6), 急性膵炎の最も特徴的な臨床症状・徴候は上腹部の急性腹痛発作と圧痛である。腹痛部位は上腹部, 次いで腹部全体が多く, 圧痛部位は腹部全体が, 次いで上腹部, 右上腹部が多いと報告されている(表VI-3)(レベル4)7)。なお, ごく稀ではあるが, 腹痛のない急性膵炎もあり(レベル4)8), また重症急性膵炎で精神神経症状をきたしていたり,脳血管障害などの基礎疾患のため意識障害がある患者では自覚症状として腹痛を認めないことがあり注意が必要である。
一方,腹痛患者全体での急性膵炎の割合は,0.9%(n=1,000)(レベル2b)9),急性発症の腹痛患者では急性膵炎は50歳以下で1.6%(n=6,317),50歳以上で7.3%(n=2,406)(レベル4)10)と報告されているが,急性腹症においては2〜3%とされている(レベル2b,5)11),12)
腹痛の他には,背部への放散痛,食欲不振,発熱,嘔気・嘔吐,腸蠕動音の減弱などが頻度の高い症状,徴候である(表VI-1,2)(レベル3b〜5)3),4),5),6)。しかし,いずれも急性膵炎にのみ特異的なものでないため,他の急性腹症との鑑別を要する。
Grey-Turner徴候(側腹壁),Cullen徴候(臍周囲),Fox徴候(鼠径靱帯下部)などの皮膚着色斑は急性膵炎に特徴的な臨床徴候としてしばしば紹介されるが,その出現頻度は3%と低く(レベル2b)13),また膵炎以外の患者でも観察される(レベル5)14)。これらの徴候は,膵炎発症後48〜72時間を経て出現することが多いため,その診断的意義は極めて限定的である。また,このような皮膚着色斑は重症化の兆候であるとする報告13)があるが,必ずしも重症度を反映しないとの報告(レベル5)15)もあり,評価は定まっていない。



表VI-1 急性膵炎の臨床症状・臨床所見




 表VI-2 急性膵炎(第2次調査)の初発症状




表VI-3 急性膵炎の腹痛,圧痛部位(%)

RUQ : right upper quadrant, LUQ : left upper quadrant, RLQ : right lower quadrant, LLQ : left lower quadrant
(文献7より引用)


 

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