ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

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第IV章  疫  学

 


2.成因


CQ2 : 急性膵炎の成因には, どのようなものがあるか?
日本ではアルコールと胆石が急性膵炎の2大成因であり,男性ではアルコール性膵炎が多く,女性では胆石性膵炎が多い。アルコール性膵炎と胆石性膵炎が急性膵炎全体に占める割合は,国や地域により大きく異なる。



急性膵炎の原因として最も多いのは,アルコールと胆石である(レベル5)13)。全急性膵炎症例に, アルコール性膵炎と胆石性膵炎が占める割合は, 国や地域により大きく異なる(表IV-2)。ハンガリーではアルコール性膵炎の頻度は胆石性膵炎の約3倍である15)。これは国民1人あたりのアルコール消費量と関連すると考えられている。一方ギリシア,イタリア,ノルウェーでは胆石性膵炎の頻度が圧倒的に高い(レベル4)15),16)。フランス,ドイツ,韓国では,アルコール性膵炎が胆石性膵炎よりわずかに多く(レベル4)15),17),メキシコやスウェーデンでは,胆石性膵炎がアルコール性急性膵炎よりやや多かった(レベル4)18),19)。厚生労働省研究班の調査によると,日本ではアルコール性膵炎の頻度が,胆石性膵炎よりやや多い(37.3%vs.23.8%)(表IV-3)。なおこの調査では,急性膵炎発症前にわずかでも飲酒があれば,アルコール性膵炎として分類されているため,アルコール性膵炎の頻度が過大評価されている可能性がある。ただし,近年のアルコール消費量の増加に伴い,アルコール性膵炎の頻度は今後さらに増加する可能性がある。
急性膵炎の成因には,性差がみられる。2003年に行われた全国調査によると,男性ではアルコール性膵炎の頻度が胆石性膵炎の約3倍であるのに対し(50.1% vs. 17.7%),女性では圧倒的に胆石性膵炎の頻度が高い(9.6% vs. 37.0%)。この傾向は,重症例でも同様であった(表IV-3)(レベル4)8)
年齢による成因の違いがみられ,高齢者では胆石性(54%),特発性(24%),アルコール性(10%)の順に,小児では膵管胆道合流異常(67%),特発性(18%),外傷(10%)の順に多いという報告もある(レベル4)20),21)
厚生省研究班による急性膵炎の調査において,玉腰らは急性膵炎発症と関連するライフスタイルを検討するため,症例対照研究を行った(レベル3b)22)。その結果,喫煙や睡眠時間は急性膵炎のリスクと関連しなかったが,発症前24時間以内に100g以上飲酒した場合のリスクは,しなかった場合と比較してオッズ比(OR)が4.4(95%CI:1.3〜15.5)と高かったという。しかし喫煙による急性膵炎のリスクについては,これと相反する結果を示すコホート研究もある(「第IV章3.急性膵炎の危険因子9)その他の要因」参照)(レベル2b)23)。また脂質摂取も急性膵炎発症のリスクと関連し,脂質摂取量が最も多い群は,その他の群と比較して発症のリスクが低かった(OR=0.49)(レベル3b)22)



表IV-2 各国における急性膵炎の成因




表IV-3 日本における急性膵炎の成因と頻度

(厚生労働省研究班2003年全国調査8)に基づく)

 

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