ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

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第IV章  疫  学

 


1.発生頻度


CQ1 : 日本における急性膵炎の発生頻度はどれくらいか?
日本での発生頻度は27.7/10万人/年であり, 男性の発生頻度は, 女性の約2倍である。


急性膵炎の診断基準は,国や地域あるいは報告により異なるが,2000年以降の報告によると,海外における急性膵炎の発生頻度は5〜80/10万人/年である(表IV-1)。急性膵炎の発生頻度の経時的変化については,近年増加しているという報告が多い(レベル4)1),2),3),4),5),6),7)
日本では1987年に,厚生省(当時)の研究班による急性膵炎の全国調査が初めて実施された。この調査では,1982年から5年間に層別化無作為抽出法により抽出された医療機関において急性膵炎の治療を受けた症例が対象となった。その結果,日本における年間発症者数は14,500人(95%信頼区間(CI):9,500〜19,500人)で,10万人あたりの発生頻度は12.1人と推計された。その後,1999年に2回目の全国調査が実施され,1998年1年間の発症者数は19,500人(95%CI:17,000〜22,000人),10万人あたりの発生頻度は15.4人と推計された。2003年の同調査では年間発症者数が35,300人(95%CI:30,500〜40,000人),と推計され,10万人あたりの発生頻度は27.7人で男女比は2.2:1,発生頻度のピークは男性で50歳代,女性では70歳代であった(図IV-1)。両調査では,調査対象医療機関や診療科,調査期間,発生頻度の推定方法が異なるが,急性膵炎の発生頻度は増加していると考えられている(レベル4)8)。日本の疫学データは,(1)慢性膵炎の急性増悪を急性膵炎として分類している,(2)医療機関だけを対象とした調査であり剖検例を含まない,という点で海外の文献データとの相違があるが,総じて日本の急性膵炎の頻度は他国と比較して,平均的であるといえる。
急性膵炎全体に占める重症急性膵炎の割合は,1987年の調査では10.3%,1999年の調査では25.3%,2003年の調査では30.8%であり,重症膵炎の割合は増加している。重症例は男性でやや多い傾向がみられた(レベル4)9),10),11),12)。ただし,1987年とそれ以降では,急性膵炎の重症度判定基準が異なるため,単純には比較できない。



表IV-1 各国における急性膵炎の発生頻度の報告




図IV-1 急性膵炎の年齢別の発症数
厚生労働省研究班による2003年全国調査8)において第2次調査対象となった1,779例の内訳

 

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