ガイドライン

(旧版)急性膵炎診療ガイドライン2010

書誌情報
ガイドライン評価委員の言葉

 
ガイドライン評価委員
東北大学大学院消化器病態学分野

下瀬川  徹

急性膵炎の診療ガイドラインは2003年7月に初版が出版されて以来,日本の急性膵炎診療に貴重な指針を与えてきたが,今回は2007年の改訂に続く,2回目の改訂となった。急性膵炎診療は日進月歩の感があるが重症例の致命率は未だに高く,最新の情報を盛り込んだ診療ガイドラインの提供は実際に診療に当たる現場の医療関係者が切に求めるものである。このような要望に応えて,多大な努力を惜しまず改訂作業を継続されている出版責任者の高田忠敬氏およびガイドライン作成委員の諸先生に心より敬意を表したい。
さて,今回の改訂の大きな問題点は,2008年10月に厚生労働省難治性膵疾患調査研究班から正式に提案された急性膵炎の臨床診断基準ならびに重症度判定基準の改訂に伴う,患者初期診療のあり方と高次医療施設への搬送基準である。本ガイドラインは現時点のエビデンスに基づき,作成委員の率直かつ十分な議論から,最も理想的と思われる搬送基準が提案されている。今後はその妥当性を継続的に検証し,エビデンスを積み重ねていく必要があろう。
本改訂では第IX章にERCP後膵炎を取り上げ,予防法を含む診療指針を提案したことが大きく評価される。膵胆道の内視鏡処置は必須の治療法であるが,合併症である急性膵炎は医療訴訟など社会的問題に発展しやすい。ERCP後膵炎を定義し,重症度を提案し,予防法を現時点でのエビデンスに基づいて提案したことは,より安全なERCP手技を求める現場の医療関係者に大きな勇気を与える意義ある成果である。
その他,本ガイドラインでは,臨床指標(Clinical indicator):Pancreatitis Bundleという新しい概念が紹介されている。急性膵炎の致命率を改善するために必要な要件を簡潔にまとめており,ガイドラインの遵守率をあげるためのエッセンスである。急性膵炎を診療する全ての医師にしっかりと記憶してほしい事項である。
この改訂第3版では最新のエビデンスが網羅され,急性膵炎の診療指針が簡潔,明快に述べられており,いくつかの重要な内容が新たに加えられた意義ある改訂版である。本ガイドラインが,わが国における急性膵炎診療の質の向上に一層役立つことを期待する。

2009年5月

 

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