ガイドライン

(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 −H. pylori二次除菌保険適用対応−

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第2部 胃潰瘍診療ガイドライン―解説―

 
9.メタアナリシス
4)結果
(5)その他


介入研究ではないが,Huangら1)は,計25研究をまとめ消化性潰瘍のリスクファクターについて解析した。16の研究で,NSAID投与1625例でH. pylori 陽性者は陰性者に比べ有意に消化性潰瘍が多かった(341/817[41.7%]対209/808[25.9%],オッズ比=2.12[95%CI:1.68〜2.67])。5つの比較研究ではH. pylori 感染の有無と関係なく,NSAID服用者は消化性潰瘍の発症率が有意に高かった(138/385[35.8%])対23/276[8.3%])。H. pylori 陰性者でNSAID非服用者と比較すると,H. pylori 陽性のNSAID服用者の消化性潰瘍発症リスク比=61.1(95%CI:9.98〜373)であった。NSAID服用者では,NSAID服用によるリスク(オッズ比=19.4)に加えてH. pylori 感染により,消化性潰瘍のリスクは3.53倍となる。H. pylori 感染によるリスク(18.1)に加えて,NSAID使用により消化性潰瘍のリスクは3.55倍となる。H. pylori 感染とNSAID使用は潰瘍出血をそれぞれ1.79倍と4.85倍に高める。しかしながら,これら2つの因子が存在すると潰瘍出血のリスクは6.13倍に高まる。H. pylori 感染とNSAID使用は独立した因子として消化性潰瘍と潰瘍出血のリスクを高め,これら2つの因子には相乗作用がある。H. pylori 陰性,NSAID非使用者では消化性潰瘍はまれである。
以下の論文は,ステートメント作成を支持するほど堅牢な結果ではないが,現時点でのメタアナリシスに基づく知見として記述しておく。
Lauら22)は,消化性潰瘍穿孔例を対象として,腹腔鏡下手術を開腹手術と比較し,13の研究をまとめた。全体の成功率は84.7%(n=249)であった。術後の疼痛は鎮痛薬使用量の低減で証明され,腹腔鏡下手術で有意に軽かった。手術創感染は有意に低かったが再手術の率は有意に高かった。術後の疼痛と手術創の合併症という短期のベネフィットは腹腔鏡下手術の方が高い。安全性と効果は開腹手術と同等であると報告している。
Sanabriaら23)は,消化性潰瘍の穿孔の患者において,腹腔鏡下手術を開腹手術と比較し,RCT2件をまとめた。その結果,腹部感染(オッズ比OR=0.66,95%CI:0.30〜1.47),呼吸器合併症(OR=0.37,95%CI:0.11〜1.31),腹部感染の数(OR=0.72,95%CI:0.33〜1.58)が減少することを示した。したがって,腹腔鏡下手術で腹部感染の合併症が減少する可能性があるが,より大きなサンプルサイズでのRCTが必要であると結論づけた。
Messoriら24)は,重症患者(critically ill patients)を対象に,ストレス潰瘍(消化管出血),肺炎をアウトカムとして,スクラルファート/塩酸ラニチジン/プラセボを比較した。消化管出血について(A:塩酸ラニチジン対プラセボ,B:スクラルファート対プラセボ)および肺炎について(C:塩酸ラニチジン対プラセボ,D:スクラルファート対プラセボ,E:塩酸ラニチジン対スクラルファート)5つのメタアナリシスを行った。A(5研究)398例,C(3研究)311例,D(2研究)226例,E(8研究)1,825例であった。Bは研究が1つしか行われていなかったので,メタアナリシスができなかった。A:塩酸ラニチジンとプラセボに差はなかった(消化管出血に対するオッズ比=0.72,95%CI:0.30〜1.70,p=0.46)。CおよびD:塩酸ラニチジンとスクラルファートは肺炎に対して効果がなかった。スクラルファートと比べ塩酸ラニチジンは肺炎を有意に増加させた(E:1.35,1.07-1.70,p=0.012)。したがって,塩酸ラニチジンはICUの患者において消化管出血の防止に効果がなく,肺炎のリスクを高める可能性がある。スクラルファートに関しては決定的な結論を出すことはできない。しかし,これらの知見は少数例の成績に基づいており,現時点ではっきりした結論を出すことは難しいと結論づけた。

 

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