ガイドライン

(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 −H. pylori二次除菌保険適用対応−

書誌情報
第2部 胃潰瘍診療ガイドライン―解説―

 
9.メタアナリシス
4)結果
(4)NSAID投与患者における胃潰瘍発生の抑制


Kochら18)の1999年に発表されたメタアナリシスによれば,10件のRCTを対象にした解析により,NSAID投与を受けた患者に対して,ミソプロストール(Misoprostol)とプラセボ服薬を短期(2週以内)と長期(4週以上)でその効果を検討。判断基準は内視鏡で診断された胃潰瘍に基づき,発生率の差(Rate Difference,RD,プラセボ群での発生率―ミソプロストール群での発生率),オッズ比(Odds Ratio,OR),さらに,Number needed to treat(NNT)である。短期の効果はRD=-13.3%(95%CI:-25.7%~-0.9%),OR=0.06(95%CI:0.03~0.15)長期の効果はRD=-8.4%(95%CI:-17.7%~1.0%),OR=0.29(95%CI:0.20~0.42)であり,有意に胃潰瘍の発生が抑制された(p<0.05)。NNTはベースラインのリスクにより異なるが,3%で35,40%で3であった。
さらに,Cochrane Libraryの33のRCTを対象としたメタアナリシス19)では,ミソプロストール400µg/日,800µg/日,H2RA標準用量,2倍用量,PPIとプラセボの比較が行われた。ミソプロストール800µg/日RR=0.18(95%CI:0.11~0.28),ミソプロストール400µg/日RR=0.38(95%CI:0.30~0.49),H2RAは標準用量では効果なし。2倍用量H2RA RR=0.44(95%CI:0.26~0.74)で,PPI RR=0.37(95%CI:0.27~0.51)であった。したがって,ミソプロストール800µg/日,2倍用量H2RA,PPIはNSAIDの長期投与による胃潰瘍の発生を抑制することが示された。ミソプロストールが一番効果が高いが,ミソプロストール800µg/日では下痢または腹痛の副作用によるドロップアウトのリスクが高まる(RR=2.45;95%CI:2.09~2.88,RR=1.38;95%CI:1.17~1.63)ことも明らかとなった。
Rostomら20)は,その後,NSAID投与患者を対象に,40件のRCTをまとめたメタアナリシスを行った。内視鏡的に確認された胃潰瘍の予防において,800µg/日の方が400µg/日より優れていた(リスク比RR=0.17およびRR=0.39,p=0.0055)。PPIと2倍量のH2RAは十二指腸潰瘍と胃潰瘍の予防に効果があった(胃潰瘍に対してRR=0.44,95%CI:0.26~0.74およびRR=0.40,95%CI:0.32~0.51)そして,ミソプロストールより忍容性が高かったことを報告した。
Vergaraら21)は,NSAID投与患者における除菌治療を非除菌療法またはPPIと比較したRCT5件をまとめた。除菌群では34/459(7.4%)の患者が消化性潰瘍を発症。対照群では64/480(13.3%)。オッズ比は0.43(95%CI:0.20~0.93)。NSAID初回投与患者ではオッズ比=0.26(95%CI:0.14~0.49)で効果が認められたが,すでに投与されていた患者では効果が認められなかった(オッズ比0.95,95%CI:0.53~1.72)。2試験385症例では除菌治療とPPIを比較。除菌群では5/196(2.6%)が,PPI投与群では0/189(0%)で消化性潰瘍を発症。オッズ比=7.43(95%CI:1.27~43.6)。除菌治療は全体としてNSAID投与患者で消化性潰瘍の発症を抑制し,特にはじめて投与される患者では有効である。しかし,PPIの持続・併用投与よりは有効性が劣ると報告している。

 

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