ガイドライン

(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 −H. pylori二次除菌保険適用対応−

書誌情報
第2部 胃潰瘍診療ガイドライン―解説―

 
4.H. pylori 除菌治療
4-1治療全般

4)解説

H. pylori 除菌治療に成功すると胃潰瘍の再発は,従来の酸分泌抑制薬を用いた維持療法よりも明らかに抑制される。しかし,胃潰瘍再発抑制の長期予後についての成績はまだ十分とはいえない(文献は再発予防で選択された13編)。
従来の酸分泌抑制薬による治療にH. pylori 除菌治療を加えても胃潰瘍の治癒に違いは認められない。メタアナリシスでは,H. pylori 除菌に成功した方が,H. pylori 陽性が持続するより胃潰瘍の治癒に優れていることが示された。また,酸分泌抑制薬を含まないH. pylori 除菌治療だけで,酸分泌抑制薬による治療と同等の治癒が得られるとの報告がある。その一方,潰瘍のサイズが大きい場合にはH. pylori 除菌治療のみでは,潰瘍治癒が遅れるとの報告もある。したがって,従来の酸分泌抑制薬による治療に,H. pylori 除菌目的のための抗菌薬等を加えても,胃潰瘍の治癒にデメリットとなることはなく,むしろ除菌に成功すると治癒促進が期待できる(文献は初期治療で選択された18編)。
H. pylori 除菌後の問題のひとつとして逆流性食道炎の発生やその増悪が指摘されている。しかし,H. pylori 除菌後に逆流性食道炎が新たに増加するか否かは報告により異なって,現在までのところ結論づけられていない。また,H. pylori 除菌治療が逆流性食道炎を増悪させるとの成績は示されていない。H. pylori 除菌後の胃食道逆流症(GERD)症状については,むしろ除菌成功群の方がGERD症状の改善や消失が多いとの報告がみられる。このように,除菌後のGERDについてはいまだ一定の見解が得られていない(文献はGERDで選択された28編)。
H. pylori 除菌治療についてはこれまでさまざまな治療法が試みられてきているが,今回は,わが国で使用不可能な薬剤(ビスマス製剤等)については対象から除いて検討を行った。PPIと抗菌薬の2剤療法はPPI単独治療に比べ明らかに除菌率が高い。2剤療法と3剤療法(PPI+抗菌薬2剤)の除菌率の比較では,有意に3剤療法の除菌率が高い。組み合わせの抗菌薬の種類,投与期間,投与量等については,明確な成績は示されなかった。ただし,3剤療法ではアモキシシリン(AMPC)とクラリスロマイシン(CAM)の組み合わせと,AMPCとメトロニダゾール(MNZ)との組み合わせでは除菌率に差はなかった。3剤療法でのPPIについてはランソプラゾール,オメプラゾール,ラベプラゾールナトリウム,パントプラゾールの間に除菌率の差はなかったと報告されている。抗菌薬の耐性率,CYP2C19の遺伝子多型の割合など,民族や国・地域の間に違いがあるので,H. pylori 除菌治療法についてはわが国独自の成績を基に検討する必要がある。わが国におけるPPI+AMPC+CAMを用いた3剤療法の成績は良好で,わが国での除菌治療として推奨される。ただし,CAM400mgとCAM800mgの間に除菌率の差は認められない(文献はレジメンで選択された22編)。初回のH. pylori 除菌治療に失敗した後の二次除菌治療についてのわが国の報告をまとめると,PPI+AMPC+MNZによる3剤療法が高い二次除菌率を示している(文献は二次除菌で選択された16編)。

 

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