ガイドライン

(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 −H. pylori二次除菌保険適用対応−

書誌情報
第1部 胃潰瘍の基礎知識

 
5.診断
3)H. pylori の診断

細菌感染症であるH. pylori 関連胃潰瘍の診療においてはその診断が基本となる。

(1)わが国のH. pylori 感染診断ガイドライン
1995年,わが国で初めて日本消化器病学会よりH. pylori の存在診断と除菌判定に関する治験ガイドラインが報告され,その後1999年に改訂された33)。さらに実地臨床を対象としたものとして2000年6月,日本ヘリコバクター学会より,「H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン」が発表された34)。ここではH. pylori の感染診断は除菌前と除菌判定に分けて述べられている。除菌前の診断は迅速ウレアーゼ試験(rapid urease test;RUT),鏡検法,培養法,抗体測定法,尿素呼気試験(urea breath test;UBT)のいずれかを用い,また除菌判定は治療薬中止後4週以降に上記検査法のいずれかを用いるとしている。さらにUBTを含むことが望ましく,また複数の検査法を用いれば精度はさらに高くなると補足している。2003年には同学会より改訂ガイドラインが発表され35),検査法に便中H. pylori 抗原測定法が追加された。

(2)各検査法の特徴
1)侵襲的診断法

胃内視鏡検査による胃生検材料を用いるためサンプリングエラーの可能性がある。そのため胃体部大弯と幽門前庭部大弯の2カ所から生検するのが望ましいとされる。
(1)培養法
胃生検材料をホモジナイズし培養する。難点として,結果判定までに時間を要する。輸送培地や選択分離培地の開発により本法が容易となった。最近注目されているH. pylori の薬剤耐性の検討に不可欠である。
(2)組織鏡検法
ギムザ染色などの特殊染色が有用である。ギムザ染色は手技が簡便で費用も安価である。組織鏡検法は同時に病理診断が可能となる。また感染源として重要なH. pylori 球状菌の検出に適している。
(3)RUT
H. pylori のウレアーゼ酵素活性により,胃生検組織中の本菌の存在を証明する。反応は迅速であり20分から2時間ほどで判定できる。安価で簡便である。
2)非侵襲的診断法
胃内視鏡検査によらない検査法。
(1)抗体測定法
血清や尿中の抗H. pylori 抗体を測定し感染診断する。わが国で分離されたH. pylori 株を抗原としたキットが開発されたが,その感度,特異度は良好である。抗体価は除菌成功後も徐々に低下するため,早期の除菌判定には向かない。
(2)UBT
13C標識尿素を経口投与する方法で,胃内にH. pylori が存在すれば,そのウレアーゼにより13C標識二酸化炭素が発生し,消化管から血液を介して速やかに呼気中に排出される。この呼気中の13Cの増加率を内服前後で測定し,本菌の存在を診断する。感度・特異度ともに高く除菌後の判定にも有用である。
(3)便中H. pylori 抗原測定法
糞便中のH. pylori 抗原を検出する方法で,その診断有用性が報告されている。
以上の6法が保険適用されているが,実際には1回に1法のみが適用であり,結果陰性の場合のみ,さらに別な検査が1法のみ保険適用となる。

(3)検査法の選択
H. pylori の感染診断は,上部消化管内視鏡検査あるいはX線造影検査により,胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍と診断された症例にのみ保険適用となる。したがって,一般臨床における各検査法の選択については,内視鏡検査を施行する場合は前述の6種の検査法がすべて選択可能であるが,X線造影検査を施行する場合は,抗体測定法,UBT,便中H. pylori 抗原測定法のみの選択である。
検査法の選択にはそれぞれ特徴があり,その長所,短所をよく理解して施行することが重要である(表9)。

表9 H. pylori 検査法の長所・短所
検査 簡便性 判定時間 費用 初回検査 除菌判定




培養法
組織鏡検法 ×
迅速ウレアーゼ試験 ×





抗体測定法 ◎〜○ ×
尿素呼気試験 ×
便中抗原測定法 ◎〜○
◎:優れている  ○:良好  △:平均  ×:劣っている
文献36より改変)


 

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